研究集会報告

順応的管理

環境水理部会研究集会で発表しました(要旨はこちら)。 中海の本庄水域はかつて干拓が予定され、堤防に囲まれていました。私たちは、それがかえって中海本体よりよい環境を維持していると主張していました。しかし「堤防を開削すれば堤防設置以前の環境に近…

河川生態学術研究会研究発表会

11月10日に開催された、第13回河川生態学術研究会研究発表会を聴講しました。岩木川、五ヶ瀬川、多摩川、千曲川を対象にした興味深い研究成果を伺いました。 たとえば多摩川では樹林化対策として2002年に造成された礫河原の、10年近くに及ぶモニタリング結果…

イメージと現実のギャップ

10月3日に開催された2010年度日本地理学会秋季学術大会シンポジウム「多主体連携による水辺域の環境活動の展開」で、「堤防撤去と開削を巡る自然科学の議論−中海本庄水域の事例」と題して事例報告しました。 本庄水域は、国による干拓事業で堤防に囲まれた部…

専門家が科学に基づいて発言する内容は合理的か?

日本地理学会のシンポジウム「環境市民活動は何を目指すのか?環境共生社会における役割と目標について考える」でコメンテーターを務めました。 コメンテーターなので、事前には講演者の要旨や著書を読むにとどめ、講演をうかがいながらコメントをまとめまし…

ドラフト → ヒュームフード

研究実験施設・環境安全教育研究会(REHSE)第6回研究会に出席しました。初めに文部科学省の方から挨拶があったり、企業の方もワーキングに積極的に関わり製品開発を行うなど、広範でありながら具体的な成果を上げている意欲的な集会でした。 これまでの成果…

沿岸環境情報プラットホーム

沿岸環境関連学会連絡協議会第22回ジョイントシンポジウム「望ましい沿岸環境を実現するためのネットワーク形成−問題の所在と今後の展望−」のご報告です。 交通の便の悪い柏キャンパスで、かつ、昨今のダム工事凍結のようなマスコミで取り上げられているホッ…

窒素研究放談会

1月8日(金)はC大のS先生のところで、T大・K先生が幹事役で「窒素研究放談会」が開かれました。2年前に産総研で同様の会が開かれたときは20名程度だったと思うのですが、今回は60名もの参加でした。発表者の年齢層が学部生からPD、中堅、私のようなロートル…

環境を守る新技術

応用生態工学会の公開シンポジウム「応用生態工学のフロンティア −新技術の開発と持続的な発展ー」に参加しました。 環境については新技術の成果が見えにくい.特に、何かが起こってしまってから問題点を指摘したり、自然再生事業などより環境を守る技術の方が…

日本陸水学会第74回大会初日

日本陸水学会が今日から大分大学で始まりました。 大気由来窒素降下物が渓流水質に与える影響(もしくは窒素飽和)に関する発表が、昨年と比べて一気に増えた気がします。今日13〜15時のポスターセッションで3件、午後の講演で6件。また窒素飽和と若干関係す…

ASLO Aquatic Sciences Meeting 2009 (3)

ASLO Niceの報告最終回は、面白いと思ったポスターをご紹介します。 まずは陸水研のメインテーマである酸性雨から、 Airborne acidification of headwaters: Can it be differentiated from natural conditions using biota? 「Although anthropogenic acidi…

ASLOのポスターセッション

日本の学会ではどちらかというと学生さんがポスター発表、教員は口頭発表という感じだと思いますが、ASLOではテニュアの研究者もあえてポスターを選択することがあります。その方がよりつっこんだ議論ができるからと、アメリカ人の知人が言ってました。なる…

ASLO Aquatic Sciences Meeting 2009 (2)

大会2日目の1月27日、8時からのPlenary LecturesのタイトルはIs there a link between biodiversity and ecosystem function in aquatic systems?でしたが、2講演とも「なるほど」と思えませんでした。とは言え、Plenaryに取り上げられる話題なのだから理解…

ASLO Aquatic Sciences Meeting 2009 (1)

大会初日に当たる26日(月)は、昼休みを含み10時半から18時までと1日を使った下記セッションを聞いていました。前回のカナダSt.Jonesでの大会は水草関係でここまでまとまったセッションはなかったことから、やはりヨーロッパで水草と水質との関係について関…

安定同位体の国際シンポジウム

先日ご紹介したISI2008(The 4th International Symposium on Isotopomers)に行ってきました。一番のお目当てだったBrian Fryさんの発表は、期待通り、とても興味深いものでした。 生物の炭素・窒素・硫黄の同位体を同じサンプルで測るだけならこれまでにも…

ELR2008口頭発表から、水位操作関係

20,21日と口頭発表があったELR2008では、いろいろ興味深い発表がありましたが、特に下記の2つはダムの特性をいかした水質管理手法として面白くうかがいました。・大気曝露によるダム下流河川の糸状緑藻類(アオミドロ)対策の効果 →粘性の高い糸状緑藻の制…

ELR2008福岡

9月20〜23日開催のELR2008福岡に来ています。 応用生態工学会、日本景観生態学会、日本緑化工学会という応用系の3学会が合同で開催しているもので、私は初参加です。 例えば来月参加予定の陸水学会は、自然環境の状況や仕組みを解明する、という感じの研究…

胎生期環境と遺伝子の相互作用

「化学物質問題市民研究会」のニュースレター「ピコ通信」の最新号(120号)に、6月10日に開催された環境ホルモン学会第19 回講演会の講演「胎生期環境と遺伝子の相互作用からみた疾病素因の形成-」の概要を伝えた記事がありました。その冒頭をペーストしま…

水草研究会第30回全国集会

千葉県立中央博物館で開催された、水草研究会第30回全国集会に参加しました。研究会と言っても会員数400人ということですから、ちょっとした学会並です。午後いっぱいかけて11編の報告がありました(そのうちのひとつは、うちのM2のI君による、ブラックバス…

2008ASLO Plenary lectures & Award talk (3)

一連の2008ASLOの報告、今回で最後です。皆様のご感想はいかがですか? 私はこの学会の雰囲気、とても気に入っています。できれば日本の若手がこういった雰囲気の学会で世界の研究者と議論し、ともに陸水学・海洋学を発展させる機会を作りたいと思っています…

2008ASLO Plenary lectures & Award talk (2)

昨日に引き続き、12日に行われたPlenary lectures & Award talkです Plenary lectures Warwick Vincent Extreme ecosystems: Limnological change at Canada’s northern edge. 「真澄、明日はフリージングな話をするから、着込んできた方がいいよ」とジョー…

2008ASLO Plenary lectures & Award talk (1)

6月10日のPlenary lectures と Award talkは、6月11日記事でご紹介しました。今日からはその続きを何回かに分けてご紹介します。今日は11日に行われたPlenary lectures & Award talkです。 Plenary lectures Elizabeth A. Canuel Organic carbon composition…

2008ASLO課題講演・一般講演から、New to meな知見(3)

最終日の13日は水生外来種問題のセッションにいました。なぜか最終日だけ、コーヒーブレークに5種類のお菓子が並べられ、午後のブレイクはアイスクリームボックスに食べきれないほどのアイスを入れて、食べたいだけどうそ、という感じでした。 16件の発表の…

2008ASLO課題講演・一般講演から、New to meな知見(2)

昨日に引き続き、12日に聞いた課題講演・一般講演から、面白く感じた発表をメモ書きで紹介します。特にこの日と13日はAuatic invasive species: Understanding invaders to prevent new introductionsのセッションがあります。この大会に参加する気になった…

2008ASLO課題講演・一般講演から、New to meな知見(1)

昨日までの2日間で聞いた課題講演・一般講演から、面白く感じた発表をメモ書きで紹介します。10日(火) Larson, C. A. STRUCTURAL AND SUCCESSIONAL CHARACTERISTICS OF ARTIFICIAL STREAM PERIPHYTON COMMUNITIES RESPOND TO CURRENT REGIME 流れを制御で…

エコでファミリアな学会

カナダのセントジョーンズで開催されている2008 ASLO Summer Meetingに出ています(ASLOとはLimnology and Oceanographyを出している学会です)。 この大会は「We have made substantial efforts to reduce the environmental impcts of this meeting」と明…

海洋環境問題委員会35周年記念シンポジウム:海洋環境問題委員会の役割と課題

日本海洋学会海洋環境問題委員会主催の表記シンポジウムを聴いてきました。 私もかつてこの委員会の委員を務めさせていただいたのですが、有明海問題について提言を行う際に、学会内で見解の相違を残したままだったことに疑問を感じ、またその頃は脳脊髄液減…

水工学講演会

広島大学で開催された第52回水工学講演会に参加しました。土木学会会員から水関係の研究が査読論文として投稿され、受理された論文の著者が口頭発表するという、私にとっては珍しい形式の学会発表です。この論文集が事前にCDの形で配布されていて、事前にA4…

そうだったんだ。。。

昨日は産総研のS先生・Y先生の主催で、アナモックス型脱窒に関する内輪の勉強会がありました。同位体比のミクロな分画、細菌の遺伝子解析など、日常では得にくい情報満載で、7時間があっという間でした。 中でも満「へ〜!」ものだったのが、緑濃菌による脱…

アメリカザリガニ恐るべし

昨日11月3日に、ご近所の公民館でNPO主催の講演会がありました。演題は「アメリカザリガニのはなし」、演者は西川潮先生(国立環境研究所環境リスク研究センター)でした。 主催したNPOは「宍塚の自然と歴史の会」で、オオクチバスの駆除がアメリカザリガニ…

あるべき水環境とそこへ到達するプロセスに関する合意形成が大切

私が事務局を務めて月1回開催している「湖沼生態系再生研究会(手賀沼モデル)」の第5回会合が、昨日行われました。講師のお一人は国土交通省関東地方整備局利根川下流河川事務所の二階堂義則所長で、「北千葉導水事業の概要」という演題でお話いただきまし…