麦秋

麦秋(=ばくしゅう)」って、いまどきの学生さんの中には見たことも聞いたことがない人もいるのだと、昨日の調査で初めて気づきました。麦の取り入れをする今くらいの季節、山は緑に包まれているのに、麦畑は黄金色から茶色へと、秋のような色彩です。手賀沼干拓地の一角の麦畑が、まさに麦秋状態でした。
日本では、場所にもよりますが、かつては多くの農家が麦を育てていました。収穫した麦は粉屋で粉にしてもらって自家製のうどんを作ったり、麦茶、麦こがし、麦ごはんなど、麦は米と並んで重要な作物でした。
田植えは本来、この麦秋のあとに麦を刈ってから、ちょうど梅雨の雨が利用できる頃に行うものでした。近頃は兼業農家がゴルデンウィークに田植えを済ませるために、電気を使って地下水をくみ上げたりして、五月晴れの下に水が張られています。
自然の気象に合わせて作物を選び、栽培方法のノーハウを組み合わせて来たからこそ維持されてきた日本の農村の光景。1960年生まれの私でさえ、「昔の農村の光景」として記憶していることが実は戦後の一時期のことだったりするほど、過去50年で大きく変わってしまいました。当然ながら、農業と水との関わりも、本当に持続的なものかどうか、保証の限りではありません。