豊かな自然に暮らすということ

小学生の娘が内地留学している屋久島は、日本でも自然が豊かなことで有名な島です。
この島、特に娘が暮らす栗生村は国立公園に一番近い、本当に自然豊かな集落ですが、この時期、夜の8時から9時は真っ暗になります。どの家も灯りを消し、テレビも消し、どうせだからもう寝ようと、そのまま寝てしまう家もたくさんあるそうです。
原因はシロアリ。6月の多雨時期の数週間は、まるで時計でも持っているかのように、夜の8時になると光をめがけてシロアリが飛んできて、網戸が開いていようなら、部屋の中がシロアリだらけになります。たとえ網戸を閉めていても、隙間無くべったりとシロアリがひっついた光景は、それはそれはおぞましいのだそうです。
先日、娘は入浴中に、初めて魔の8時を迎えました。ふと窓を見ると虫がびっしりと貼りついていて、恐怖のあまり裸で浴室を逃げ出したと、里親さんが笑ってました。
不思議なことに、シロアリの襲来はそれから9時までの1時間だけ。それで娘がお世話になっている家でも、8時から9時までは真っ暗にして過ごすのだそうです。
「ここは蚊も多いし、ムカデも多いし。蚊はともかくムカデだけは気をつけるよう言ってるけど。」
そう、殺虫剤がまかれることが比較的少ない、自然が豊かな環境というのは、そういうものでした。農薬をまかれる前の河内平野は、数m先も見えない蚊やりをくぐって通学していました。ノボシビルスク近郊の湖沼調査では、サンドウィッチを食べているのだか、虫を食べているのだか。。。
今、自然再生に関わっている都会で生まれ育った若い方達の中には、本来の自然、少なくとも農薬がまかれる前の自然は、昆虫ランドだったという認識は極めて希薄であるように感じています。たとえば水環境が回復して水草がよみがえったときに、それが流れ着いて臭いとの苦情が出るのも、同列な問題なのかもしれません。