9月12日に行われた陸水学会公開シンポジウム「霞ヶ浦の水質―古くて新しい問題―」から、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の水野玲子先生のご発表を紹介します。
水野先生は私同様、霞ヶ浦を水源とする水道水を使っています。霞ヶ浦は本来は水道水にするにはCODで示される有機物濃度が高すぎるのですが、公には安全であるとされています。しかし環境ホルモン関係の最新知見では超低レベルの化学物質でも生物に影響があることが報告されていること、塩素殺菌による副生成物の一部分しか規制されてないこと、複合汚染の影響はまだ未解明であることなどから、本当に安全かどうか疑ってみる必要があるのではないかと提起されました。
ご存知のように霞ヶ浦では鯉ヘルペスウィルスが蔓延しましたが、その原因の一つは、化学物質による免疫力低下だったかもしれない。多くの公害病で、まず人間以外の動物に異常が見られたことを忘れてはならないと言います。
そして実際、利根川下流域で胆ガンが多発しているそうです。1980〜90年にかけて胆のうガン・肝外胆管ガンが霞ヶ浦周辺で目立つようになったとの新潟大学グループ研究を、1993年のAERA誌が報道しています。
それが本当かどうか、水野先生ご自身が平成10〜14年人口動態特殊統計をまとめたところ、肝・肝内胆管がんによる男性の死亡比は、美浦村・東・鹿行南部など霞ヶ浦を水道水源としている地区で、茨城県平均の1.5〜3.0倍も高かったそうです。
このスライドを見た、地方自治体の研究所に勤めているある知人は「これが本当なら大変なことだ」と、信じられないといった表情をしていました。
霞ヶ浦については自然再生が重視され、NPOによる自然再生活動が広く知られています。しかしその水質が本当に安全化に関しては、研究さえほとんどされていないというのが実情のようでした。