東大・地理で陸水学を学んだ先輩方は、なぜか海にも関わってこられました。名著「湖沼学」の吉村信吉先生は雪氷と河川以外の全ての陸水域を研究された方ですが、海関係の論文も多数あります。名古屋大学水圏研究所で活躍された西條八束先生も海陸どちらも研究対象とされ、その意義を海洋学会の和文誌「海の研究」最新号で解説されています。私の学位論文の指導教官だった東大海洋研の小池勲夫先生も、地理学教室で書かれた卒論のフィールドは五色沼でした。
そういう流れもあって、今は陸水学に専念している私ですが、これまでは海の研究の方がはるかに多いです。特に熱帯域のサンゴ礁は、今でもチャンスがあったら研究したいフィールドです。
サンゴ礁は二酸化炭素のソースかシンクかという議論が一時盛り上がっていました。今は何となくソースではないかと思われているようですが、私はシンクだと思っています。サンゴ礁生態系の一次生産者の窒素同位体比を世界で初めて測ったのが私ですが、その結果、サンゴ礁生態系では窒素固定系が卓越していることが分かりました。だとしたら、どこかで脱窒が起こっていなければ、生産は正味で正になり、有機物が蓄積しているはずです。そして、サンゴ礁域やその周辺堆積物の同位体の報告で、脱窒が起こっていることを示すデータは今のところ見たことがありません。
この研究の続きをしたくて、学内で募集されている、年間最大2億年で5年間研究できる予算制度に応募してみました。学内で2件だけ採択されるとのこと。ほとんど宝くじですけど、当たるといいなあ!