中津川での樹林化

今日は日本地理学会2007年秋季学術大会(熊本)に参加してきました。いろいろ面白いお話を伺いましたが、
宮ヶ瀬ダム建設前後の中津川河川敷の変化」がとても印象に残りました。この研究は卒論研究で、学生さんが自分で選んだテーマだったのだそうです。その方は就職して学会員ではないので、指導教官の方が代わりに発表されていました。

3月26日の記事で「樹林化」を紹介しました。上流にダムができて洪水が制御されることにより、礫が下流に来なくなり、また水量が少な目に固定されることで、本来は礫がゴロゴロしていた河原に林が出現してしまう現象です。
私が紹介した相模川では50年以上前にダムができていて、下流はすっかり林で覆われていました。水質はひどいもので、髪の毛のような付着藻類が生えていました。
ところが厚木より下流にいくと、かえって水質がよくなります。この原因は、途中で中津川が合流するからです。

中津川に宮ヶ瀬ダムができたのは1994年、運用は2001年からです。完成してからまだ10年ちょっとで、ダムの中にはまだ有機物はそれほどたまっておらず、流れ出す水の水質は、問題にはなっていません。でも、ダム以前は毎秒1700立方メートルの計画高水流量だった中津川の、今の洪水流量は毎秒100立方メートル。これでは下流の土砂は移動しません。固定された河道に、早くも植生が進出している様子が紹介されていました。

洪水が起こらなくなった川。それは治水という面ではメリットはあるものの、川本来の姿ではないと言う一面が、このままでは日本人の記憶から無くなっていくことでしょう。既に日本の川は、このような樹林化が進んだものばかりだからです。