9月21日の記事で、M1のI君の実験で、ブラックバス(オオクチバス)100尾が必要と紹介しました。
「そんなにどうやって釣るの?」「それは大丈夫です。○○すれば。。。」
の「○○」の部分、見事にあてが外れてしまったとのメールがI君から届きました。実は彼は、バス釣りトーナメントで釣られるバスを引き取れば大きいのがたくさん手にはいると算段していたのですが、
「バス100個体確保計画に関してですが、本日トーナメント開催者である○○○本部に、実験の協力を仰いだのですが、断られてしまいました。結構食らいつき、本部長様にも確認を取っていただいたのですが、たとえ100尾でも現在バスは彼らにとって貴重な存在であるため引き渡すことは出来ないとのことでした…(ちなみに釣り上げた個体は再放流するそうです)。また、水産の面でも貴重な資源として位置づけられているようで(少なくとも琵琶湖では)、そういった観点からも引渡しはしがたい、とのことでした。」
何それ?10月14日記事でご紹介したように、琵琶湖では、かつては在来魚が漁獲されていたところが、今はバスばかりでした。そのため琵琶湖では「琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」に基づき、オオクチバスとブルーギルのリリース禁止を実施しているはずです。
○○○本部の方は、堂々と「私は条例違反をしています」とうちの学生に宣言されたことになります。
私はかつて、バス釣りを禁止にすべきと主張されていた若手の魚類学者の方と議論して、「バス釣りまで禁止してしまったら、子供達がワクワクする遊びの場として湖を捉えられなく危険があるのではないか。大切なのは、その湖を頭ではなく、現場で見て、現場で感じることで、そのきっかけの一部としてバス釣りを位置づけられないか」と反論しました。
しかし、琵琶湖でのバスのリリース禁止に反対している方々の主張をウェブなどで拝見すると「バス釣りとはリリースを行うことが文化であり、伝統だから、リリースの禁止はバス釣りの禁止に等しい」としています。そこまで主張するのなら、「その文化と伝統は、日本固有の魚を捕るという文化と伝統を琵琶湖という場から消滅させかねないから、バス釣り自体が禁止されても仕方ないですね」と、さすがの私でも言いたくなります。
バス釣りという新たなレジャーも、琵琶湖の伝統的な漁法も、どちらも守るために、せめて条例として定められたリリース禁止だけは守っていただきたいと思います。
PS:ちなみにI君の研究は、今やこんなに増えてしまったバスが、日本の生態系でどのような役割を果たしていて、完全な除去によって生じる良い点と悪い点を科学的に解明しようというものです。「バスは外来魚だから駆逐すべき」とのドグマとは無縁に進めています。私自身、現時点ではまだデータがないので、バスを完全に駆逐することが日本の水環境の復活にどこまで寄与するかについては、言明できるとは思っていません。