海藻からバイオ燃料を生産

『Ship & Ocean Newsletter』の最新号(175号)に「海藻からバイオ燃料を生産―日本独自の技術で確立を―」という記事がありました。特に「海洋で大きなバイオマスをもつ光合成生物のうち、ホンダワラ類はバイオ燃料の原料として大量収穫やその他にかかるエネルギーコストが他の藻類に比べ低いと考えられる。」との記載の横に示されている写真は、島根県隠岐島のノコギリモク(褐藻のホンダワラ類の仲間)の群落。
実は、共著の「里湖モク採り物語」でご紹介しましたように、その昔の中海周辺では、中海に生えるアマモやホンダワラ類だけでは肥料としての供給が足りず、隠岐にも遠征してホンダワラ類を持ち帰っていたのです。かつてはこのような肥料目的の採藻漁を通じて閉鎖性水域の過度な富栄養化が防がれていたと考えられます。
私たちは「里湖モク採り物語」の結語にこう書きました。「我々の意図は,現在でも沈水植物帯が健全な湖や,その後の環境改善によって沈水植物帯がよみがえった湖において,再び労働集約的農業をおこなって,過去の肥料藻採集文化をそのままの形で復活させることではない。重要なのは,かつては人間の生活自体が,湖沼を中心とする沿岸域の物質循環において栄養塩除去機能を果たしていたこと,その大きな要素が沈水植物からなる肥料藻採集であり,それを維持するために今日でいうところの「バイオマニュピレーション」がおこなわれていたことを理解し,その量を評価し,現在においてはそれに変わるどのような手法が可能かを考えるべきであることを強調したい。」
『Ship & Ocean Newsletter』の記事では、ホンダワラ類の流れ藻を回収することで日本海全体の浄化になると記されていますが、富栄養化が問題になっているのは沖合というより内湾域なので、そこからの栄養除去機能が働くような仕組みを考えていただけたら、肥料藻採集に代わるバイオマニピュレーションになると思いました。