湖沼の生態遷移

2004年の調度いまごろ、シベリアの小さな湖沼から得られた過去5000年分の柱状堆積物について、炭素・窒素・リンと炭素窒素安定同位体比の分析結果に関するレポートを、依頼主のロシア人研究者に送りました。あれから4年、マグネや色素、花粉などの他の分析結果をまとめて、ようやく投稿論文の形になった原稿が、昨日彼から戻ってきました。これがいわゆるロシア時間?
その湖はレスの大地にだんだん水がたまって、泥炭湿地を経て沈水植物が優占する池になり、現在に至っています。生態学の教科書などでは、(なぜか)いきなり池ができて、そこに土砂がたまり、植物が入り込み、浅くなっていつか消滅、という遷移の説明が普通です。尾瀬もそんな感じの説明が多くて、恩師の阪口豊先生は花粉分析の結果からそうでないことを議論されています。
シベリアの池の結果は、そんな遷移の概念と逆を行くので面白いと思い、2005年にスペインで開かれたASLOで発表しました。案の定、発表後に何人もの方が直接質問に来られて、これは面白い論文になると確信しました。
実は水深がどんどん深くなっていく過程で、沈水植物の種類が劇的に変化しました(詳細は秘密!)。彼が筆頭の大論文はPalaeogeography, Palaeoclimatology, Paleoecology に投稿されますが、私の方では植物の遷移に力点を置いた論文を書いてみようと思っています。
生態系の変遷というタイムスパンの長い現象については、地学分野の研究者は物証をもって議論できるので、現生しか見ていない方々よりも、より真実に近いことを見つけだすことができると思っています。