2008ASLO課題講演・一般講演から、New to meな知見(3)

最終日の13日は水生外来種問題のセッションにいました。なぜか最終日だけ、コーヒーブレークに5種類のお菓子が並べられ、午後のブレイクはアイスクリームボックスに食べきれないほどのアイスを入れて、食べたいだけどうそ、という感じでした。
16件の発表のうち3件がGreen Crabでした。発表を聞く限り、これが入ったことで生態系が大きく変わるなどの弊害は出ていないようでした。
一方、たった1件の発表でしたが、こんなのが入ってきたら大変!と思ったのが下記、Membranipora membranaceaです。コケムシの仲間で、日本では同属はいるようですが、同種は今のところ侵入していないようです。

Scheibling, R. E. & Gagnon, P.
FLUCTUATIONS IN ABUNDANCE OF AN INVASIVE BRYOZOAN (MEMBRANIPORA MEMBRANACEA) IN KELP BEDS: ENVIRONMENTAL MEDIATION AND CONSEQUENCES FOR ECOSYSTEM DYNAMICS
外来性のコケムシ類Membranipora membranaceaは、1980年代に大西洋のケルプベッドに侵入した。これにおおわれるとケルプが固化し、波浪などで容易に破壊される。破壊後に再びケルプが再生せずに、外来種であるCodium fragileに置き代わってしまうため、事態は深刻である。

では、こうならないために侵入を防ぐ手段はないか。下記は対策の一つであるearly detectionの有効性を調べたものです。結果として、初期段階の密度では、サンプル数を100とか、実現困難なほどに増やさない限り検出できない。従って、陸上植物なら空港周辺、海産生物なら港など、早期に侵入して密度が高いと思われるところを中心にモニタリングすべきとの提案でした。
MacIsaac, H. J. & Muirhead, J.
EFFECTS OF LIFE HISTORY AND PROPAGULE PRESSURE ON SPREAD OF AQUATIC INVASIVE SPECIES

最後に、私の発表です。
Yamamuro, M. et al.
DIFFERENCE IN THE MUSCULISTA SENHOUSIA INVASION TO UPSTREAM REGION IN RELATION WITH ITS HOME GROUND HABITAT
世界各地に侵入し、堆積物表面に足糸でマットを形成して問題になっているホトトギスガイは、本来の生息地である日本の中海でも問題になっています。しかしこのマット形成は、中海にアマモが生えていた頃には生じていませんでした。同様にマットが形成されていない佐陀川と、アマモが生えていた頃の中海の文献記載から、好気的な環境下では、ホトトギスガイ捕食者が多く、マットを形成できなかったと推測しました。


この発表を聞いて、コンビーナーの方が面白い話をしてくれました。アメリカでもホトトギスガイが西海岸の各地でマットを形成しているのですが、そのうちのひとつでアマモ場の造成を行ったところ、1平方メートルあたり3000個体の密度でマットを形成していたホトトギスガイが、全くいなくなったそうです。