陸水研夏の学校

陸水学実習1日目(8月20日)は、当初予定していたカワヒバリガイ調査が例年にない水位上昇に加え、前夜に「竜巻注意報」つきの雷雨が起こって急遽中止となったので、D4のT君がオーガナイズしてくれた「陸水研夏の学校」としました。T君が考えた基本テーマは「研究推進の作法」。来年の実習は極力天候に左右されない内容にしようと思いますが、実習とは別に「陸水研夏の学校」は毎年開ければいいなと思います。
以下、T君が作ってくれたプログラム+私による加筆です。
もしかしたらカワヒバリガイは中止になるかもしれないからとT君に代案をお願いしたのが15日だったので、学生さん達はそれから4日の間に、自分の研究以外の内容を合間をみて準備してくれたのだと思います。本当にお疲れさまでした。
なお当日のプレゼンは、陸水研専用のサーバーに入っていて、メンバーならいつでも見ることができます。今度現役メンバーに相談して、OB・OGも個人フォルダー以外は見ることができるようにしたいと考えています。もちろん、来年の新入生や、将来の陸水研メンバーは、サーバーに蓄積してある過去のセミナーのプレゼンや実習データなどに自由にアクセスできます。いつかあなたのお仕事も、このサーバーの宝になりますように。
 
陸水研夏の学校プログラム
理論編 (Professor Y)
1. 10-12時 研究のグランドデザイン〜仮説、検証、論文にするまで
 →実際はほとんどこういうアカデミックなお話ではありませんでした。かつ、あまりにアカデミックではないので、私のプレゼンだけはサーバーにはいれてません^^;

実践編
2. 12時〜12時半  精度のよい分析の作法について (M2のT君、M1のH君)
  GC-MSからみる高い精度の分析手法

→中央大S先生、産総研Y先生のもとでアナモックスの高感度分析で研究を進めているコンビによる、自身の失敗を踏まえた紹介は、とてもわかりやすく、また示唆に富むものでした。陸水学実験室は、スペース・電力容量不足から高感度分析と言える機器は皆無ですが、基本をきちんとマスターして、それぞれの分野で一流の先生方に教えていただいて、研究を進めてもらえればと思っています。

3. 13時半〜15時 既往研究の提示について(M2のI君、M1のKさん)
 End Noteを用いたデータベースの構築と引用方法
4. 15時〜17時 論文作成のための強力な道具 (D4のT君、M1のM君)
 Word, Excel, R, Visual Basic カンバス、データ管理、解析、処理の自動化
 飛び入りでYから「蔵衛門」活用術、Inspirationの紹介
5.17時〜18時半 夏休み中の研究進捗状況(M1,D1計4名)
 
概要----
1. どうやって自然現象から因果関係を見出してまとまった論文にするか、ということは案外と取っ掛かりがなくて難しい作業であると感じることが多いのではないだろうか。ここでは、観察や観測の結果から仮説を立てて、それを検証し、論文にするまでの研究の流れを実例をもとに説明する。

→先述のように、理路整然とアカデミックなお話をしたわけではありませんが、結果としてどうやって私の論文がでてきたかはお分かりいただけたかな?と思います。 


2. 質の高い研究には精度の高い分析手法が欠かせない。精度の高い分析は、ノイズを低く抑えることにつながり、何かの異変が起きたときにそれがシグナルなのかノイズなのかの判別が容易であるからだ。
ここでは、GC-MSの分析手順を例に各作業の段階で気遣うこと・注意することなどを説明し、精度の高い分析を導く作法を他の機器分析にも応用できるよう、一般的な形で示す。
 
3. 研究の成果である論文の構成は一般に、「これまで何がわかっていて、ここで私は新しくこんなことをやった。」と表現することもできる。この前半部は通常、文献を集め、それを適切な形で論文の中で引用していくことを言う。
今日、計算機の進歩は目覚しく、「これまでわかっている部分」をデータベース化し文章内で、正確に引用していくという作業には非常に適している。今回は、End Note というソフトウェアを使用し、データベースの作成方法と論文内での引用方法を示す。
→ここでI君、「学部の頃、先輩の中にはエクセルにいちいち入力したり、驚くことに論文を書く度にリファレンスを入力している方までいましたが。。。」と話を切り出しました。論文書く度にいちいち入力していた私は小さくなっていました。。。
 
4. ここまで、研究を進める上で準備する道具立てをいくつか提示したが最後に実際に論文を書くときに、必要になるだろうソフトウェアを示し、その中で論文作成に便利な機能を紹介する。便利というのは、単に正攻法の近道と見られる場合もあるが、機能的に研究をこなすことは研究の高い生産性につながるので、そういった歩みの積み重ねは科学の発展を推進する有力な技術であるといえる。
以下に、取り上げるソフトウェアを挙げる。
Word: 文章作成に用いる。目次化や文章のスタイル、添削機Excel: 数値の処理に用いる。セルの見やすい表示方法、効率のよい処理方法をVisual Basicとあわせて紹介する。
R:フリーの統計処理ソフトである。適切な統計処理、ファイルの操作等について述べる。
Visual Basic: プログラミング言語。WordやExcelに標準で入っている。特定の処理を多数自動化したい場合に非常に有効である。