若者はなぜ3年で辞めるのか?

新卒で就職した若者の3割が、3年以内に職を辞すと言われています。

今のM2は私から手取足取り指導されることなく「研究なんて就職してからプロジェクトに関わるのと変わんないから、練習と思いな」とか言われ、「最先端やってないとライバル企業に負けるでしょ!」と国際誌読まないととんでもないみたく言われて、今まで頑張ってくれました。

そんな彼らは平行して一部上場企業の採用内定を早々にいただいているのですが、私の教育がもしかしたら彼らに3年以内に職を辞させるのではないかと危惧して、読んでみた本です。

案の定、若者が職を辞すのはこれが原因ではないかと思っていた理由を、著者は非常に説得力のある論旨で解説していました。

日本はいまだに年功序列で、かつそれはとっくの昔に維持されない状態になっているのに(年金なんて、その最たるもの。私は常々、1円だって私の世代は戻ってこないと周囲に言っています)、いまだにそれがあるように見せかけている。だから若者の賃金より50歳過ぎた、実質仕事力は劣っている場合が多い中高年の方が給料が高いことが、いまだ当たり前に思われている。

大学なんて特にそうです。アメリカなら、教授だって自分の給料はある程度ファンドをとって自分で稼がなければならない。でも日本の大学は、いくら科研費を採るか、いくら特許をとるか、論文を書くかに関わらず、教授になって何年、で給料が決まる(おかげで、成果主義産総研から異動した私の給料は、年収にして100万円近く下がりました)。

若者はだまされている。今、低賃金で働かされているのは、中高年の高給を保障するためであって、かつ自分がその歳になったときに同じ待遇にあることはまずない。それに気づくのが3年以内、ということなんです。

著者は言います。日本ほど、若者を食い物にして平気な国はない。こんな国は、遠からず滅びる。

私もそう思います。定員削減で、助教ポストがどんどん減っていきます。大学にいるのが准教授、教授が大部分になって、活力ある研究ができるのでしょうか。個人的には「教授であろうが助教であろうが、給料は成果主義にして、教授といえども成果をださない方は減給します。定期昇給は不要です。その分、若い研究者のポストを作ってください。」と、自ら文部科学省に申し出るのが、この国の将来をになうアカデミズムがすべきことだと思います。

それをしないで、本来育てるべき若手のポストや収入を奪って、自らの既得権を守ることを優先する組織は、いつか滅びます。

さて、私の学生たちが、3年以内にやめるかもしれない組になるかもと思った理由は、著者の下記からも読みとれます。

「自分の乗ったレールはどこに通じているのか。そして、自分の欲するものはなんなのか。もしそれが自分のレールの先になさそうだ、と感じるなら、自分で主体的に動き始める必要があるだろう。」

主体的に動け!あらゆる壁にとらわれるな!(ついでに、可能なら壁などぶっ壊せ!)

私の教育は、それに尽きます。私の学生は3年以内に辞めるか、組織を自分が利用するか、どちらかになる可能性がとてもありますが、「レ・ミゼラブル」のジャベル警視のような人生にだけにはならないと思っています。