なじみの音たち

10月9日は西條八束先生の命日で、先生のお人柄のような暖かい秋晴れとなりました。
暑くも寒くもないこの時期に、産業技術総合研究所では、設備点検の為の計画停電が行われます。私が客員として質量分析計などを使わせてもらっている第7事業所は、11日が停電。例年なら10日の深夜に質量分析計をシャットダウンし、11日の夕方には立ち上げて、真空が破れている時間をなるべく短くします。
あいにく今年は10日の早朝から札幌での陸水学会に向けて出てしまい、帰りは13日深夜。こんな長く真空破って、立ち上げるときにトラブルがなければよいのですが。。。
このブログでも時々書いているように、質量分析計に限らず、分析装置は私自身で維持し、精度管理もしています。「産総研は技官に任せられるからいいですね」と言われることもありますが、分析をきちんとやることが重要な分野では、それはあり得ないのではないでしょうか。少なくとも私は、任せる気にはなれません。また、分析値を出すところにも気を遣う必要があるデータで書いた論文を載せる雑誌は、そうでない雑誌と明確に分かれているように思います。
マスの電源を落とすと、ターボポンプの音がだんだん低くなり、やがて聞こえなくなったときには、まるで別の実験室みたいな寂しさを感じます。産総研ではターボのアルトやインキュベーターのテナーをBGMに10年以上を過ごしてきたのに、大学の教授室にいると何も聞こえません。学生さんが来てくれて議論するのも楽しいけれど、装置達がにぎやかな、実験や分析の場にいることも同じくらい楽しい。先日、挨拶に来てくれたコンサルの方が「こんなウナギの寝床みたいなところにいるのですか!」と驚いていた教授室も、実験室(それももう少し計画性のある)につながっていてくれたら、まだしも心地よいのですけど。