修士論文までに投稿論文を書く意義

大学全入時代を反映して、最近の学生は何をしたいかさえわからないで入ってくる、との論説をよく見ます。しかしここは大学院大学ということもあり、陸水研の学生さん達を見る限り、英語論文のレビューもがんばってやっているし、学会発表やプロジェクト研究の報告もきちんとこなすし、問題意識と積極性に欠けると思ったことはありません。
ただし日本人学生全員に共通して、学会発表まではきちんとできる(=要旨の執筆やプレゼンはできる)のですが、論文を書くように言っても全く書こうとしません。結局は修士論文が最初の論文執筆となり、研究というプロジェクトの成果を、社会にアピールする文書にして発表する能力をほとんど身につけることなく卒業してしまいます。作業量は卒論以上なのに、でてくる修論は卒論程度という修論(私の個人的基準からという意味で)をみつつ、大学院に進みながら何てもったいないと思います。
論文を書くことは、要旨のような短い文章を書くのとは質が違います。要旨程度なら、自分が出した結果という情報が、他の情報、たとえばWikipediaなどにある情報の理解と同じ程度の「理解」でも、適当に切り張りして文章をつなげることはできます。しかし論文というアウトプットをだせる「理解」は全く別物です。提案した問題についてどう考えて仮説をだし、その確認として何を考え、結果がどうだからそれは何を意味するのかという、既にある文章のコピペでは不可能な文章を書く能力が要求されます。つまりオリジナルを創る力です。
教育の違いか、帰国して研究職につくことを目指しているからか、外国人学生はそのあたりの姿勢が180度違っていて、バングラデシュからの学生もフィリピンからの学生も、修士論文の内容を当然のように国際誌に投稿します。むしろ修論ができる前から国際誌に投稿、という感じでした。日本人学生は、たとえ博士を目指していても、修論前に国際誌という意欲が全然低くて、これで本当に博士取れると思っているのかな?と不安です。
私の場合は、卒論のデータも、さんざん苦労して出したデータなので日の目を見ないのはくやしいと思い、結局は国際誌に載せました。ここで博士号を目指す学生さんは、できれば卒論も最低限国内誌に載せ、修論はM1の間に国際誌に投稿する内容を書いてしまうつもりで来てください。その指導をするために、指導教員がいるのですから。

(追伸)自然環境学専攻の博士課程受験申し込み締め切りは12月5日です。
下記、自然環境学専攻の入試案内を参考にしてください。
http://www.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/admission/index.html
ただし2009年2月博士受験者は、2007年3月1日以降に受験したTOEFLスコアシートが必要です。