不況の中、車を輸入する為に干潟を埋め立てるべきか?

昨年の7月9日付記事で、愛知県が計画する三河湾「六条潟」周辺の200ヘクタールの埋め立てについて、環境省が独自に環境影響を調査したところ、「生物の生息密度が25%減少する」という結果が出ていたことがわかったことを紹介しました。
愛知県が埋め立てたい理由は、既に自動車輸入実績全国一の三河港を、さらにたくさん輸入するためです。自動車メーカーなど、不況の中でメーカーから解雇され、生活の見通しが立たない人が大勢います。だから埋め立てという公共工事をすべきという議論が起こることを危惧します。
何となれば、工事による雇用は一時的なものです。そして、既にクルマにあふれている日本で、これからも右肩上がりにクルマの需要が増え、そのために車の輸入用に整備された施設が稼働し続けるということは幻想に過ぎないと思われるからです(そもそも輸入用の港ですから、国内での生産には結びつきませんし)。
一方で、埋め立て予定地は、国内生産全国一を誇る愛知県のアサリの稚貝が育つところです。全国のアサリ産地で不振が続く中、ここは奇跡的にいまでもアサリが健全に再生産できる場なのです。このような場所を人間が作ろうとすると、例えば人工干潟造成にかかるような予算を投じても、もともと干潟がないところに作られた干潟を維持するにはメンテナンスも必要になり、またこれまでに自然干潟に匹敵する生態系が再現できた例はほとんどありません。
資金を投じて人間が作ったものでないから経済的価値や市場効果が土木事業ほど評価されないかもしれませんが、今ある自然を守ること、それを通じて国内で食料を生産する場を守ることは、車を輸入する港を拡大するよりも大きな経済効果があり、うまく工夫すれば雇用の増大にもつながるのではないかと思えてなりません。