外来種駆除技術開発について、企業の方がご相談に来られました。
「。。。ということで、日本ではこの種類が○○国ほど深刻になるケースが限定的だと思いますので、○○国での駆除技術について、時間ができたら調べておきますね」「お忙しいところをすみません」「いえ、こういうのって楽しいですから。ここにいると何に忙しいって、たとえば入試関係の案内書作りとか、全然つまんないことばっかり」「えっ、そういうことを東大の教授がするんですか?」「助成金の会計報告書作りとかもしますよ。」「。。。」
企業の方は絶句され、それは先生の能力を無駄に使ってますねと言われました。同感です。同じ税金から払われる給料なら、私が不得意とするこんな雑用ではなく、水環境の情報収集と提供にもっと時間を使いたいと思います。
私が学生の頃の地理の先生方は、こんな雑用やっていませんでした。私の時代にはシラバスとか入試案内書とかありませんでした。入試問題も印刷製本されたものではなく、コピーだったと思います。パソコンが普及していない時代、会計報告などは事務の方が算盤を使って手書きされていた場面しか覚えていません。
当時の地理は教授3名、助教授3名、助手3名くらいでした。これに対して支援スタッフは事務(この方は当時の教授よりも地理在籍歴が長く、教室の主と言われていました)、司書、技官、用務員と4名。9名の教員に対して4名ですから、教員2人に1人の支援スタッフとなります。そして学部学生の定員は1学年7名で、大学院に進学するのは毎年2,3名程度でした。
現在の自然環境学専攻陸域は、教授5名、准教授3名。支援スタッフは常勤ゼロ、専攻の予算で2名の非常勤事務スタッフを雇用しています。これをカウントしても8名の教員に2名ですから、支援スタッフは私が学生の頃の半分です。そして大学院の定員は陸海合わせて46名、半分としても23名が毎年入って来ます。
仕事の内容が増え、教育する学生も増えたのに、支援スタッフは半減。これでは教授の雑用が増えざるを得ません。
と、PDのT君にぼやいたら、
「よそでは助教にそういう仕事させるみたいですよ。だから助教になるくらいなら研究所のポスドク、という人が増えてるって聞きます」
昔ならそのまま助教授、教授とあがれたでしょうから、事務仕事も修行の内だったでしょうけど、今やそうでないのに、気の毒ですね。
大学教員の雑用を減らす努力なしで、世界をリードする大学を目指すなんて絵に描いた餅になるんじゃないかと思います。