今年度もまた陸水研を目指して、様々な学生さんがトライされるのだと思います。それにつけても、よく私みたいな学生を修士に進学させてくれたと、自分が選考する立場になって改めて思います。
卒論の指導教員だったS先生は、地理を受験する前に、本人以上にいろいろ気を遣ってくれていました。宍道湖の底生動物と環境の関係を卒論で研究していたのですが、もう少し研究したいから修士に進みたいと希望するや、お知り合いだった京都大学のK先生や東北大学のK先生に、そちらに進学させてもらえないかと相談されたそうです。でも「学部で生態学をやっていない学生は採りたくありません」と断られたとのことで、「いつも言っているように、地理は考え方の学問だから他流試合をすること。そして僕は絶対に指導はしないから、自分で研究すること。その覚悟があるなら引き受ける。ただし地理学の基本は陸水学以外もきちんと勉強すること」と言われました。地形学さぼりまくっていたこと、バレバレだったようです。それで「新編日本地形論」の最初の方から出題してくれたのに、それさえ解答できなかったのは、このブログで何度も書いたとおり。
おまけに私は遅刻常習者でした。当時は風呂がない、月2万円少々の当時としてもかなり安い(それだけ快適ではない)アパートに住んでいました。エアコンつける経済的な余裕もなかったし、かといって窓をあけて寝るのは物騒なので、暑くなるとアパートが冷める朝4時くらいまで学生室にいて、それから帰宅して寝てました。起きるのは暑さで目が覚める朝10時。それから指導教員のS先生の講義に行くと30分以上の遅刻ですが、先生の講義はすごく面白かったので(ならちゃんと起きればいいのに)、堂々と一番前に座って聞いていました。S先生は何回かは激怒されたような気がしますが、そのうち「君は武蔵だ」と諦めて何も言われなくなりました。
こういう非常に態度の悪い学生と知っているのに、どこも引き取ってくれそうにないからと進学させてくれたS先生。「うちには、はみ出した学生がいて。。。」とその後も心配が絶えなかったと、愚痴の聞き役だったA先生が、生態学琵琶湖賞を受賞したときの陸水学会長祝辞で暴露されていました。
面接に来られる学生さん、進学された学生さんに、「こんなことも知らないの?」「ちょっと口の利き方おかしくない?」と内心思うこともあるのですが、私を進学させてくれたS先生の太っ腹を思うと、したいことがあって来たいなら拒まず、でないと恩返しにならないと思います。ただし来られた学生さんに対して、S先生のように心配していても黙っていることができず、ついつい色々言ってしまうのが人間できてないところ。