生態学といえばオダム

私は生態学琵琶湖賞をいただいているものの、自分自身は生態学をやっている気は全然なくて、専門はと聞かれると生物地球化学と答えます。
そんな私にとって数少ない、これは面白い考え方だと思ったのがオダムの生態学。特に、私がD論書いてた頃にScot Nixonがbenthic-pelagic couplingという概念を打ち出して、浅海域の生物生産がなぜ高いかはこれで結構説明できて感服したのですが、もしやと思っていたら、彼はやっぱりオダムの弟子でした。
今回、ワークショップのグループの長だったコーネル大のSwany教授が、エスチャリーの一次生産をいかにシンプルなモデルで再現するかという、私とかなり似た発想の仕事を最近発表されていたのを読んでいたので、「何かオダムのセンスですねぇ」と夕食時に話しかけたら、「彼は僕の師でしたから」。
それからはオダムの話で盛り上がりました。彼曰く、HTオダムはあまりに超越した人で、彼の思考には誰もついていけなかったから、あれだけすごいのに評価が低いのだとか。え、これだけ評価されている人なのに、直弟子から見るともっとすごい人だったと思うの?その点、EUオダムは人当たりがよくて、HTほどぶっとんでないから、HTより理解されていたのだそうです。
ちなみに、たとえば英語でGoogleを検索するとHoward Thomas Odumがトップに来ますけど、日本語だとEugene Pleasants Odumばかりでてきます。
「私の自慢は、サンゴ礁生態系では栄養塩をリサイクルしているというオダムの仮説を、窒素安定同位体比を使って反証したこと。これは結構いい仕事だと思っているし、L&Oに出した割には引用されないんだけれど、その後で他の欧米人研究者が同様の報告を次々出しているから、たぶんなし崩し的に、サンゴ礁は窒素固定が卓越している系という見解が主流になるんじゃないかな」と話したら、師の説を反証したというのに「それは面白い」と賛同してくれました。その後は、Oligotrophicationとか、海産物を使ったBiofuelについて日本語でしかない情報を何とか世界に伝えられるといいですね、みたいな話になり、あのScot Nixonがそういう関係のワークショップを開くから、誘うように言っとこうか?とありがたいお言葉。Dの学生だったときに、僕のところにポスドクに来ないかって誘ってくれたScot Nixon。あれから20年だけど、まだ覚えていてくれてるかな。でも10月って講義も始まっているし、行くのは厳しいだろうなぁ。
そうそう、Swany教授によると、オダム兄弟の父親は社会学者だったそうです。なんとなく、なるほど、と思いました。