亡くなった被害者の過失とされた、運送会社による死亡事故

毎日新聞の地方記事に、下記があります。
http://mainichi.jp/area/nara/news/20090801ddlk29040514000c.html
生駒の高専生衝突死:賠償、1審より増額 ヤマト運輸と運転手に高裁 /奈良
生駒市の奈良工業高専生、児島健仁さん(当時18歳)が00年5月、バイクで登校中にヤマト運輸(東京都)のトラックと衝突し死亡した事故で、遺族が運転手と同社に慰謝料など約1億450万円を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は31日、約2500万円の賠償を認めた1審・奈良地裁判決を変更し、約3000万円の支払いを命じた。


多くの方が、おそらくあまり気にとめないこの記事の背後にあるもの。たとえば事故が起こったのは9年前、その9年間が遺族にとってどんなものだったか。そしてこの判決にいたるまでの公判数は30回以上、刑事訴訟と合わせて70回以上、大企業を相手に仕事を持つ母が戦ってきた、その結果なのでした。

この事件は、多くの死亡事故のように、過失は亡くなった被害者にあるとして不起訴になるところでした。亡くなった健仁さんのお母様は、自宅近所で起こったこの事故に、過失は運転者側だと確信され、息子さんのお友達と一緒に自ら現場検証するところから始められました。
以下、そのお母様が記者会見に備えて用意されたメッセージから抜粋いたします。

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私達の国は、判で押したようにバイク乗車の若者の死なら、堅実な捜査よりも先に、マスコミへの発表時、「若者の暴走が事故原因のようだ」、幼児・子供なら、「子供の飛び出しによる原因」と説明されます。この手法は「死人に口なし」として処理し易く、遺族が真相解明を諦めればそこですべて終わりにできます。半世紀以上この同じ手法が全国で使われています。その先に改善など有り得ません。それ故、トラックに巻き込まれ死亡する子供や親子、学生、高齢者方のニュースは毎日のように繰り返されています。
現状を変えなければと先進諸外国の取り組みを調べました。驚いたのは車が発明された1930年代直後に素早く、車が持つ危険性を察知し市民活動が起こった国々があることでした。
「交通事故の際の子供の免責ドイツでは損害賠償法が改正され、2002年8月1日より満十歳までの子供が交通事故に遭った場合は、原因の如何を問わずドライバーが全ての責任を負うこととなりました。同様の措置は他のヨーロッパの国では早くからとられており、オーストリアとオランダでは14歳まで、フランスでは16歳までとなっているそうです。自動車と歩行者・自転車とでは、力学的に見て、事故時の加害力に明かな差があり、両者が同じ平面上で共存せざるを得ない現状では、加害力の圧倒的に大きい自動車側が、その加害力に比例するだけの注意をはらい、事故責任を負うべきです。とくに子どもに対しては、五感の発達やとっさの判断力、危険に対する注意力等が未成熟な存在であることをふまえ、事故責任は全面的にドライバー側が負うべきなのです。」

(略)

被害の当時者・遺族が置かれる現状は、とてつもなく過酷だと思い知ります。
その過酷さを黙々と耐え、乗り越えてゆくと、違った自分になれるのだろうかと思うことがあります。道は遠いです。
でも、今この道をしっかり歩かないと、後の人達が同じように苦労します。
自分の生まれた国なので、良くなって欲しい。今より、良くなって欲しい。だから、くいしばって歩こうと思います。
先に亡くなった息子への、それが親のつぐないです。

(追伸)
このような悲劇が起こらないようにと、児島様達が運営されているサイトは下記です。
http://kento.holy.jp/
こんな悲劇が二度と起こってほしくない、でも万が一起こってしまっ時、どうしたら真実を明らかにして、死者の過失がごどき仕打ちに立ち向かえるかの参考になるマニュアルが紹介されています。

(追伸2)
確率的には、明日にもあなたかあなたの家族が交通事故にまきこまれかねない、まるで地雷の中を歩くような異様な日本。いかに異様かは、たとえばヨーロッパとかオーストラリアを旅行されたら実感できると思います。死亡事故は減ったとされますが、それは24時間以内に死亡しなければ死亡事故にならなからだとか、延命治療により命だけは助かっても重度な障害が残って家庭が完全に破壊されるとか、私程度の後遺症なら人身事故にもしてもらえないとか。。。
下記からその実態を少しでも感じていただけましたら。
http://www.inochi-message.com/link/