応用生態工学のフロンティア −新技術の開発と持続的な発展−

9月26日に開かれる表記公開シンポジウムに関して、応用生態工学会事務局からのメールを転送します。「下記【企画のねらい】にもありますように、政権交代の影響がこの分野にどのように及ぶかについても話題に上ると思われます。」だそうです。そうかぁ、そういう視点もいれるのかぁ(と、このつぶやきの意味を知りたい方は、プログラムのリンクに飛ぶか、下の写真を拡大して眺めて下さい^^;)

【タイトル】「応用生態工学のフロンティア −新技術の開発と持続的な発展−」
【日時】9月26日(土) 13:30〜17:00
【参加料】無料
【プログラム】http://www.ecesj.com/J/events/annual/13th_meet/program.htm
【場 所】埼玉会館小ホール
【企画のねらい】
応用生態工学会は、それまでの土木技術と生態学の融合をめざして設立された学会であり、行政が行う施策を支える学問分野ということができます。
現在応用生態工学の会員の過半数コンサルタントをはじめとする民間企業に勤務されている方で占められています。このため、応用生態工学会の発展を図る一つの方法として、コンサルタントの科学・技術レベルのアップを図ることが必要です。しかし、現在のコンサルタント等を取り巻く環境は複雑です。
まず、行政が行う施策と応用生態工学とのかかわりを考えると以下のようなことが考えられます。情報公開の推進により個々の施策の細部まで説明責任が生じることになります。その場合、施策の是非についてそれぞれの立場で、生態工学に係る技術的な内容を研究している研究者がお互いに技術論を交わすようになると考えられますので、行政としては、海外も含めた第一線の科学技術情報に基づいた検討が要求されることになります。しかし、経済回復が思うように進まない中で人員削減を余儀なくされている行政が、様々な業務への対応と並行して、情報公開に対応することは不可能と考えられます。このため行政は、施策決定にかかわる過程の中で、今までの何倍も広い部分をどこか他の組織に任せ、その結果から施策の意思決定を行なっていくことが必要になってきます。
一方で、大学をはじめとする研究者は、科学技術の探求のもと細部の現象解明に特化した研究に入り込むケースが少なからず見受けられます。このため、ともすれば応用生態工学に関係する分野で、現場のニーズに答えることは徐々に難しくなってきています。
次に、応用生態工学を取り巻く社会情勢を考えると、以下のようなことが考えられます。
自然環境や社会環境の変化が加速する昨今において、公共事業や自然環境の保全に対する社会の要望は年々変化してきており、今後、他省庁や自治体を含め様々な点で新たな施策の展開や新しい問題への対処が求められると考えられます。折りしも保守的色彩の強い自由民主党から改革を目指す民主党に政権が交代した現在にあって、政治が政策決定の細部に係ることが方向付けられれば、今まで以上に最先端の視点から妥当な技術に基づく施策の展開が求められることはいうまでもありません。
これらのことは、今後コンサルタント等に求められる役割が格段に重要となること、また、コンサルタント等の科学技術のレベルアップが必要になることを意味しています。これが実現できれば、行政や大学研究者、ひいては社会にとってもメリットが極めて大きいのです。しかし現状では、コンサルタント等のもつ学術レベルや、新技術の開発余力等に関するインセンティブは十分とは言えません。
現在コンサルタント等に発注される業務の多くは、プロポーザル(技術提案)により選定される仕組みとなっています。しかし、選定結果を見ると、これまでの科学技術レベルに基づくアプローチが重用され、新しい科学・技術に基づいた、抜本的な提案はリスクを伴うものとして受け入れられないといった例が散見されます。このことは、新しい分野の技術開発、人材開発もなく、他分野への進出もままならない状態に至ることを意味しており、業界としての魅力低下を招き、優秀な若年層の業界離れに繋がりかねないほか、大学等の博士課程修了者の就職先を狭め、オーバードクター問題を引き起こす大きな原因にもなっています。
こうした問題は、単に一つのセクターで解決できるのではなく、関連する産官学すべてのセクターが一緒になってよりよい方向を目指して改善をしていくことしかないように思えます。
今回の公開シンポジウムは、こうしたことを目指して企画しています。招待講演をお願いした両氏やパネルディスカッションに参加される方々は、産官学それぞれの立場において第一線で活躍されています。公開の場において、それぞれの立場や視点から問題に対する解決の糸口を探ることで、応用生態工学の更なる発展に向けわれわれが実施すべき方向性を、会場の皆さんと一緒に考えたいと思います。
応用生態工学会第13 回埼玉大会 大会委員長 浅枝 隆(埼玉大学教授)