個別の成分によらない排水の生態毒性影響試験(WET)

水環境学会誌11月号の特集は「化学物質管理の動向と将来」。中でも米国で行われているWET試験(Whole Effluent Toxicity test)の紹介に興味を持ちました。排水中には分析では検出がむずかしい化学物質が多数存在しますし、化学物質全ての生態毒性情報が整備されているわけでもありません。また毒性データの多くが単独で存在していることを想定してとられたものですが、環境中では複数の化学物質が相加的・相乗的な影響を与える可能性もあります。そこで排水中の化学物質毒性を総合的にとらえるため、処理をほどこしていない全排水に毒性が存在するか否かを判定するのがWET試験です。
WET試験では少なくとも3種類以上の生物を用いて試験を行います。生態学的な位置づけを考慮し、感度、再現性、代表性から、藻類・淡水性甲殻類(ミジンコ)・海産エビ類・淡水魚類・海産魚類が標準的に採択され、生態毒性が最も鋭敏な生物種の結果を最終判断に使用することになっています。
生態毒性は急性毒性と亜慢性毒性の2種類を採用しており、特に亜慢性毒性試験は4〜8日間実施され、生物の生存、成長および繁殖への影響をとらえ、最大無影響濃度を決定します。
WET試験で基準を超過する毒性が認められた場合、毒性削減評価(TRE)・毒性同定評価(TIE)が行われます。詳細は水環境学会誌11月号「化学物質と生態影響試験」をご覧ください(学会誌のホームページにはまだ目次も載っていませんので、どこかの図書館ででも)。