学生さんが国際誌に受理される論文をなかなか書けない理由は、日本人らし日本人だからかも、と思うことがあります。
高校でアメリカに留学したとき思ったのは、彼らは、自分が常識的なことを知らないのではないかとか、とりあえず周辺がどういう反応をするかとか、そんなことにあまり気を配らないこと。え?こんなことを尋ねるの?という質問とか、質問というより自己主張のスピーチじゃん、みたいな場面がたびたびありました。
学生さんが書くのを見ていると、この逆に近い感じがします。まず、これって誰かが言っていないか、自分が知らないだけだったんじゃないかと探す。そして、誰かが近いことを書いていると安心して、それがここでも当てはまりました、みたいな文章になってしまう。自己主張せず、みなさまに合わせているのでしょうけど、これじゃつまらない。
あなただからこそ見えてきた現象、出会ったフィールドが絶対にあるはずで、それはあなたでしか語れないことなのだから、まず、そのストーリーを書いてしまいましょう。それについて誰が何を言っているかは、書いてしまってから調べればいいのだから。
だから陸水研では、年度初めのゼミで配る「修論研究の進め方」が、下記で始まります。
1.イントロを書く
(1)おおまかに決めたテーマについて、これまでに関連分野ではどのような取り組みが為されてきたのかをレビューする。
(2)何が明らかではないから問題が解決されていないのかを再検討し、解くべき問題を明確にする。
(3)上記の解答を得るための実験計画(ここでいう実験は野外観察も含む。○○ならば、○○であるという仮説が必要)を大まかに立てる。
(4)上記(1)〜(3)を文章にする。
このときにレビューしてから、フィールド行って、データを取って、解析している間に、学問はそうそう大きく変わっていませんから、
5.ディスカッションを書く
(1)データが仮説を支持しているか検討した結果を文章にする。
支持していなかったら、原因を考えて文章にする。
・仮説が間違っている
・実験・観測手法が目的に適していない
(2)ディスカッションで書いた内容に関してキーワードを選出し、文献を再度レビューする。
(3)ディスカッションの議論や新たに加えた文献内容を踏まえて、イントロを書き直す。
(4)残された問題を書く。
この段階でのレビューは、誰かが同じ事を言ってないか一生懸命探すレビューではなく、次につなげるレビューです。
もっと自分のデータ、自分のフィールドを信じましょう(信じられるデータを取りましょう)。よほどヘマをしていない限り、そこについてあなた以上に知っていて、だからそういう調査をした人はいないわけで。
誰もやっていないからこそ、論文を書く意味があるんです。。。