海洋ごみ問題の現状と課題−多様なセクターの役割とネットワーク−

沿岸環境関連学会連絡協議会第22回ジョイントシンポジウム「望ましい沿岸環境を実現するためのネットワーク形成−問題の所在と今後の展望−」(1月23日開催)から、小島あずさ様による表題のご講演の要旨です。
ネットワークの意義についてもコメントいただく予定です。

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海洋ごみ問題の現状と課題〜多様なセクターの役割とネットワーク〜
                JEAN/クリーンアップ全国事務局 小島あずさ
○海洋ごみ問題の現状について
・全国各地の海岸漂着ごみの実態
・生活ごみが海を汚しているが、社会的な認識が遅れている
・多種多様な材質のごみが大量に混在し、有効再利用が困難
・海洋生物等へ絡まりや誤食など、海浜植物の生育にも影響が
・紫外線、高温等による劣化、微細破片化
・プラスチックごみ由来の化学物質による汚染の懸念
・ごみは漂着する場所を選ばない(回収できない所にもごみは来る)
・回収、処理等すべてに費用がかかる
・回収は住民やボランティア頼み
・2009年7月に法的整備がなされるも、現場への反映はこれから

○海洋ごみには、さまざまな立場の人々が関与している
・国 内閣府総務省、外務省、文科省農水省林野庁水産庁経産省国交省気象庁海上保安庁環境省
   各省における施策の推進、海岸漂着物対策推進会議(基本方針の策定等)           
都道府県 海岸管理
・市町村  回収したごみの処理等
・地域住民 ごみの回収等
・地域外からのボランティア ごみの回収等
NPO/NGO 全国規模 ごみ回収、調査、啓発、教育、全国的視野に基づく助言、政策提言等、地域と地域をつなぐ活動、国際連携等
NPO/NGO地域的規模 ごみ回収、地域の沿岸環境保全に関する諸活動
・研究者、研究機関 海洋ごみの調査、研究、専門的助言等
・国際機関 越境環境問題としての認識に基づく対策の推進
・その他 漁協、企業等 ごみ回収、社会貢献活動
・国民全員 ごみの発生
◎全員が当事者である
◎地域ごとに海洋ごみの状況・実情が異なり、対応する地域のしくみも自ずと異なる
◎各主体の特性に応じた役割分担が必要
◎調査や研究だけでは、現場は改善しない
◎拾う(回収)だけでは、根本的解決にならない
◎出さない、調べる、拾う⇒一定の美観を維持するための方策が必要

○ネットワークの鍵
・ネットワークの目的は?(名簿だけでは実効性がない)
・メンテナンスは誰が担うのか?
・継続的なネットワーク維持費用は?
・成果検証や評価はどうするのか?

○主体ごとの役割を活かすには
・国 「地方自治の時代」の言葉に甘えず、現場を知った上で、国としての対策を継続的な予算措置、特に市民セクターへの経済的支援のしくみ構築
都道府県 海岸漂着物処理推進法により、漂着ごみ対策が責務に
⇒市町村まかせの見てみぬふりはできなくなった
⇒地域計画の策定、地域協議会等の開催など。地域での人材育成、しくみづくりを
・住民、ボランティア 回収活動、地域での啓発等への積極的参加、問題提起(住民の視点で)、継続的取り組みやしくみ作りへの関与
・地域的規模のNPO等 地域での調査、課題整理、行政と住民やボランティアをつなぐ、地域計画等への参画、継続的取り組みの事務局的役割
・全国規模のNPO等 各地の実態把握、全国規模での課題整理、各種情報収集と発信、人と人、団体、地域、各主体などをつなぐ・結ぶ、
広域的視野での継続的な取り組みとその評価
国際連携の推進による先進事例共有など
・研究者     科学的知見の蓄積と、研究成果の現場への還元、助言
         海洋ごみ問題改善のための実用的研究の推進
         領域を超えた共同研究の推進
         国際的な問題提起や共同研究。取り組みの遅れている国等への刺激、働きかけを研究的アプローチによって促進
・国際機関    国際的な情報共有、理解促進、先進事例の紹介や技術移転の支援
         各国行政内の縦割りを乗り越える情報発信
・その他     団体内に留まらない活動の拡大、連携
         回収処理費用等の経済的支援、業界の専門性に基づく知見提供
・国民全員     発生抑制にも回収促進にも貢献できる

●海洋ごみプラットフォーム・Japan
地域ごとの実情に基づく地域版プラットフォームと全国規模の2種類が必要
その2つが連環してこそ効果があがる
地域版 山形県、瀬戸内海などで動き出している
全国版 JEANが提案し、多くの関係者の賛同を得て2007年5月に始動。
    年1〜2回の会合(参加者の最新情報共有等)を実施
    今後は、全国モニタリング、各種WG等の展開が必要