沿岸域の総合的管理の法制度―現状と改革―

沿岸環境関連学会連絡協議会第22回ジョイントシンポジウム「望ましい沿岸環境を実現するためのネットワーク形成−問題の所在と今後の展望−」(1月23日開催)から、交告尚史先生の要旨をご紹介します。
砂利採取は海にも川にも共通する問題ですね。
法律の結合というお話も、是非聞きたいと思う項目ばかりです。

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沿岸域の総合的管理の法制度―現状と改革―
交告尚史(東京大学大学院公共政策学連携研究部教授)

1.はじめに ―「沿岸域管理法制度論」の講義内容―
「沿岸域」のとらえ方:森・川・海のネットワーク
観点=生態系保全+利用調整 他に都市計画、防災などの観点が必要だが・・・
取り上げる法律=森林法、採石法、砂利採取法、河川法、海岸法、漁業法など

2.空間の連続と法律の不連続
(1)理念:施策相互の有機的連携、総合性かつ計画性(環境基本法14条)
(2)対象空間の限定・・・森林法、河川法、海岸法
(3)地域指定・・・保安林、海岸保全区域
(4)重複指定の余地・・・原則として認めない、ただし特別の理由に基づく協議指定 

3.法律の目的の呪縛
(1)目的拘束の法理
○ 採石法の岩石採取計画の認可に際して行政機関は自然保護を考慮できない?
(2)世紀転換期における河川法、海岸法、港湾法等の改正
法1条の目的規定に環境保全を追加 →環境保全事業の正統性を主張できる
(3)権限濫用論(醜悪な目的違背の制裁)から考慮可能事項論へ
○考慮すべき公益事項を目一杯法律に列挙する・・・立法論
○考慮可能な公益事項を冷静に見極める・・・解釈論

4.法律の結合
(1)事後的な網打ち・・・環境影響評価法の横断条項
(2)政策的な結合
基本法の制定・・・生物多様性基本法はアンブレラか? 環境法家族論の試み
スウェーデンにおける傘法・・・理念法と実施法の実践的結合
○環境法典・・・環境保護の諸法律を1つの法典に(スウェーデン、フランス)
(3)立法制度の問題・・・縦割り制度の下で総合的な法律を作れるか
(4)結合の観点の問題・・・生態系保全、利用調整、防災など、観点を増やせば結合度は緩む。栄養塩の適正な移動といった小さな(しかし重要な)観点に特化すれば・・・
(5)必要な知識の確保の問題・・・行政機関における吸収、市民参加における学習機会