沿岸環境情報プラットホーム

沿岸環境関連学会連絡協議会第22回ジョイントシンポジウム「望ましい沿岸環境を実現するためのネットワーク形成−問題の所在と今後の展望−」のご報告です。
交通の便の悪い柏キャンパスで、かつ、昨今のダム工事凍結のようなマスコミで取り上げられているホットは話題でもないタイトルのシンポジウムで、ご参加下さるとしたら沿岸環境を総合的に検討する必要性を痛感されている方々だろうから、たぶん40〜50名の参加だろうと考えていたのですが、のべ70名を超える方々にご参加いただきました。高校生の時に1年間アメリカでホームステイしたユダヤ系の家族に聞いた記憶があるのですが、ユダヤ系の神話だか格言だかに、世界に5名の賢者がいれば、世界は救われる、という趣旨の話がありました。様々な課題が山積する日本の沿岸環境ですが、5名どころか70名もの参加をいただいたことで、大変に心強く思いました。ご講演者の先生方を始め、ご参加いただいた方々に厚くお礼申し上げます。
このブログでたびたび取り上げてきた「どのような組織が沿岸環境についてどのようなことをしているか」に関する情報プラットホームをIT上に構築することについて総合討論で議論いただきました。
私は、それは必要と考える方が大多数で、ではどのようなキーワードで検索できるようにするのか、どのようにして構築してどのようにメンテナンスするかが議論の対象と考えていたのですが、そもそもそういうものは不要、というご意見も出されました。
たとえばGoogleなどの検索で十分ではないか、とのご意見。また、沿岸環境関連の学会を統合して、土木学会のように行政関係者も会員として含む巨大学会を目指すべき、とのご意見でした。
全く想定していなかった見解だったので、大変参考になりました。そういう見方もある状況を踏まえ、一方で、たとえば市民が問題に直面したときに、いったいどこに問い合わせればよいかさえ分からないという状況は確かにあります。再度、最大ユーザーをどのように想定して検討する必要があると思いました。

このシンポジウムは、実はもうひとつの目的があって、LOICZに日本の海の現状を見ていただきたいと思っていました。卒論以来関わっている山陰地方の宍道湖・中海が、その安定した塩分のために汽水域の物質循環のある意味モデル実験的な場になっているように、日本における沿岸環境問題は、人類がひとしく抱える問題の箱庭的状況だと私は思っています。水俣が公害問題の原点と言われるように、ここが原点で、だから日本の状況を広く世界に発信して、人類共通の問題として対処することで、このような問題がまだ生じていない国での被害を未然に防ぐことができると思います。
そう思ってLOICZ議長のニュートン博士をお招きし、諫早や海ゴミが漂着する五島を視察していただきました。ニュートン博士はもともと海洋化学がご専門ですが、沿岸環境の持続的な利用にはHuman Dimensionからのアプローチが不可欠と考えていて非常に熱心にその方面の研究も進めています。その彼女の熱意と広範な知識・経験から、彼女はわずか2日の視察で、例えば五島では若者が漁業で生計を立てられず島外にでていく問題なども含めて、問題の解析の試みを講演してくれました。
そんな彼女を成田に送る途中、3月にインドで開かれるLOICZの科学委員会では、次期LOICZのpriority topicとして「海ゴミ beach litter」を提案しようということになりました。東アジアの地域的な問題にとどまらず、これは世界共通の問題との認識を広めること、その上で科学研究を行うことが必要という点で、彼女と私の考えは、他の多くの海ゴミに関わっている方々同様、全く一致していました。
これから3月に向けて、また急がしい日々になりそうです。