Critical reading

ある学会誌のオピニオン論文に、こんな記載がありました。
「日本の交通インフラは、欧米主要国と比較して、量・質ともにレベルが低い。たとえば、車両台数当たりの道路延長でみると、日本は1万台当たり約15kmであり、これはドイツよりも高くイギリス並みであるが、フランスは1万台当たり25km以上、アメリカは1万台当たり45kmである。」
なるほどと納得しますか?本当かなぁと思いますか?
私は分母に「1万台当たり」とした点が「変だ」と思いました。
狭い日本と広大なアメリカ。もし国土面積当たりの道路面積にしたら、日本は道路占有率がアメリカやフランスより高くなるかもしれない、と。
分母を車台数にとり、上記ロジックで道路を増やすとします。渋滞が緩和されるなどから車の台数がまた増え、そうすると分母が増えるのでまた「量・質ともにレベルが低い」ということになります。それも何かおかしい気がします。
研究においても、書いてある事、特に解釈にあたる部分は鵜呑みにしないようにしましょう。たとえ教科書であっても「本当かなぁ」と疑いながら読む方が、覚えこもうとするよりよいと思います。昨日の講義でも紹介しましたが、オダムという人が書いた生態学の本では、サンゴ礁では栄養塩は新規には入らず、生態系内で循環させていると書いてありました。でも、サンゴ礁内で餌を食べた水鳥の糞が周辺でグアノとなってリン鉱石として輸出されていたり、ナマコが取り尽くされて食材になっている事実からすると、外に出て行く生産があるわけですから、外からの新規の栄養供給もあるに違いないと私は思いました。それがサンゴ礁では窒素固定が卓越しているとの発見につながりました。