アサザはミジンコの敵かも

第16回バイオアッセイ研究会・日本環境毒性学会合同研究発表会のポスター発表「オオミジンコを用いた湖水の水質評価−沿岸帯の毒性要因−」は、とても興味深い内容でした。
目的は「オオミジンコを使って天然物質(水草)の毒性評価を試みた」です。対象となった水草は浮葉植物のヒシ、アサザ、そして沈水植物のエビモ。実験の結果、「エビモ抽出物からは顕著な遊泳阻害は確認されなかったが、アサザからは遊泳阻害が確認された」そうです。ヒシについては、密度が低下した時期にオオミジンコの遊泳阻害率が上昇したことから、ヒシが食害を受けて枯死するときに有害物質が出ているのではないか、としています。
中国・雲南省に、急速に富栄養化が進んでアオコで覆われてしまったデン池という湖があります。ここでは富栄養化が進んだときにアサザが急激に増えるにつれて沈水植物が壊滅し、その直後、アオコの異常増殖が始まったそうです。沈水植物が減ることでそれが使っていた栄養塩がアオコに回ったことに加え、アサザによりアオコなどの植物プランクトンを食べてくれるミジンコが減って急激にアオコが増えたのかもしれないと、このポスターを見て思いました。
このブログでたびたび指摘しているように、浮葉植物に覆われると酸欠で動物が住めなくなります。それに加え、アサザは酸素が豊富な表層でも一部の動物の生息を困難にしている可能性が浮上してきたわけです。この研究の今後の展開に注目したいと思います。
それにしても、アサザの大群落を作ることで虫や魚も増えると唱えているアサザ基金の方々は、これまでまともに自然を観察されてきたのでしょうか?自然の大切さを子供達に教える上でまずやらねばならないのは、ビオトープアサザを植え、それを湖で増殖させれば自然再生だと、まるで造園で自然を作れると誤解させることではありません。霞ヶ浦という湖沼がどういう湖沼なのか、先入観を持たせずに謙虚に観察させることが基本ではないでしょうか。
(なので、総合学習などをアサザ基金にお願いしている学校の先生方には、本当にそれが子供達にとってよいことなのか再検討いただければと思います)
アサザ基金のホームページによりますと、子供達と湖岸を1年間(だけ!)観察した結果、アサザの再生が自然の再生になると「閃いた」とあります。かくも根拠レスなことが閃くような観察とはいったいどんな観察だったのか、そこから問い直されるべきでしょう。また、絶滅危惧種であるというだけでこの植物を危険なまでに増殖させようとした生態学者の方は、動物については全くのシロウトだったのではと思わざるを得ません。霞ヶ浦(北浦)ではイシガイが全滅し、タナゴも消えてしまいました。その原因が粗朶消波施設ではないかとの指摘もあります。もしそうだったら、保全生態学者であるご自身も遠因ということになりますね。
逆に、アサザ基金のプロジェクトとは今では一線を画していて、一時は共著も書いたけれど今はアサザの植栽が保全とは思っていない、消波施設も必要とは考えていないのならば、一般市民に分かる形で(例えばもう一度本を書き直すなど)、お立場を明らかにすべきだと思います。

(追伸)屋久島で樹林化調査をしているM2から、予定していた作業を無事終了したと電話がありました。お疲れ様。帰路も事故のないように。また、堆砂量の計算完了までがdutyですよ^^