9月2日に第16回バイオアッセイ研究会・日本環境毒性学会合同研究発表会で講演した際に、私の家では浴室が発がん性VOCであるクロロホルム(トリハロメタンの1種)の発生源だったことを紹介しました。その調査は2002年に行って頂いたもので、当時は浴室が発生源であるとの論文報告は見あたらなかったので、「あくまで仮説ですが。。。」と講義などで紹介し続けてきました。
その日の懇親会で、浴室がトリハロメタンの発生源であるとの論文が近年でていると教えていただき検索したところ、専門家の間でも関心が高まってきたようで、下記の文献を見つけました。
温浴施設におけるトリハロメタンの実態と暴露量
鎌田 素之 , 長谷川 駿
用水と廃水 50(12), 1012-1019, 2008-12
気相曝露量の実態調査に基づいた水道水中トリハロメタンの曝露量と飲用寄与率の評価
柳橋 泰生 , 権 大維 , 武藤 輝生 [他]
水道協会雑誌 79(3), 3-15, 2010-03
2日の講演では、全国的に原因不明の肺がんが増えているとの「ためしてガッテン」2009年11月25日の放映内容を紹介し、その一因が残留塩素や水道水の塩素処理で発生する複製物ではないかとの私の仮説を紹介しました。排気ガスや農薬が原因だったら、地域差が出ると考えられます(例えば米どころの新潟県で水田除草剤CNPやPCPの混入物が原因でガンが増加したように)。これに対して水道水は残留塩素を0.1mg/l以上残すよう一律に義務づけられています。またトリハロメタンは上記の論文のように、水道水起源で気相に移ります。たばこを吸う人もおらず大気汚染とは無縁と、思い当たることがないのに肺がんになる人が全国的に増える理由として、あり得ないことではない気がします。
上記のうち「気相曝露量の実態調査」はまだ入手できていないのですが、気相曝露の影響がどのように評価されているか興味が持たれるところです。
(追伸)なんで日本の論文だけなのだと、一部の方から顰蹙を買いそうなので弁解。日本のように高い残留塩素を義務づけている先進国は稀なのです。例えばドイツでは塩素を一切添加しない水道施設もあります。信州大学の中本先生は、塩素によって細菌による感染を防ぐやりかたは野戦で即席の安全の水をつくる方法で、敗戦時にやってきたアメリカの進駐軍による塩素消毒の強制をいまだに引きずっているに過ぎないと指摘されています。