ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ

B6版117頁とコンパクトながら、日本に住むザリガニの全てが扱われています。
表題の「ニホン・アメリカ・ウチダ」は日本に生息するザリガニ3種の名前です。もともと日本にいたのはニホンザリガニだけ。残りの二種は外来種です。これら3種も含め世界のザリガニ類の分布から始まり、生息場所や餌など生態の基本や、江戸時代には胃石が漢方薬として利用され珍重されていたなどの人との関わりが紹介されています。また、野菜が不足すると「青いザリガニ」になり、それが続くとやがては白くなるとか、口の脇から尿を排泄し、その尿が警戒信号としてコミュニケーションツールになっているなど、トリビア的知識も満載です。
読み進めるうちに、人と身近な動物との関わり、その関わりの変化、そしてこれからをどう考えるかなど、筆者のいう「環境に対しての実体験」の基本を、ザリガニとともに考えてみたくなる1冊です。
これからも変わり続ける水環境に対して次世代を担う子供達が、「種多様性」とか「保全」とか言葉だけに踊らされず、現実に対応できる能力を身につけてもらいたいと思っている親世代にお勧めです。何と言っても、子供達とザリガニで遊ぶのは楽しいですし。

ザリガニ―ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)

ザリガニ―ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)

(追伸)陸水研では2年前の卒業生、現在のM2と、ザリガニを扱っている学生が続きました。来年度もザリガニ研究が継がれそうなので、この機会に川井唯史氏のザリガニ関連著作3冊を買って、勉強し直すことにしました。今回はその第一弾です。