アサザを植えてトキなんて、本気じゃないでしょう

山階鳥類研究所名誉所長で、現在、新潟大学 朱鷺・自然再生学研究センター長の山岸哲先生の講演を拝聴しました。
いま日本にいるトキは中国から連れてきた番から生まれたものですが、その中国でも一時は絶滅したと考えられ,再発見された1981年当時は7羽しかいなかったそうです。それが現在では野生600羽、飼育は5箇所で490羽。ここまで回復する上で、政府の強烈なバックアップがあったようです。陝西省石仏村では、巣が見つかったら住民を担当者に任命し補助金を出したそうです。その出し方が、卵を産むといくら、孵化するといくら、巣立つといくらと、イベントに分けて後に進むほど単価を高くしていたそうです。「まさにトキは金なり」なんてジョークをはさんでのお話はとても楽しく、あっというまの90分でした。
講演後に、「霞ヶ浦ではアサザを植えることで100年後にはトキが舞うようになると学校で教えているようですが、どう思われますか?特に浮葉植物であるアサザが一面に湖を覆うと酸欠で魚は減るので、トキにとってはよくない気がするのですが。」という趣旨の質問をしました。「わかりやすいのでシンボリックにコウノトリやトキを使っているだけで、鷲谷さんも本気で戻ってくると思っていないのではないですか」とのお答えでした。
鷲谷・飯島共編「よみがえれアサザ咲く水辺」によれば、飯島氏は小学校でアサザ基金の活動を説明するときに、この「100年後にはトキ」という図を見せて説明するそうです。本気じゃないとしたら、少なくとも小学校の教育としてやっていいことではないですね。本気だというのならば、山岸先生のような専門家の意見を聞きに行ったことが、なぜ一度もないのでしょう。お二人とも、実は本気でないからだと思わざるを得ないです。

追伸:本はホームページと違って取り消しが効かないので貴重です。上記の本には、鷲谷・飯島両氏がとんでもなく無知で不勉強だったゆえにアサザプロジェクトを始めてしまった経緯が分かる記載が、至る所にあって楽しめました。