アサザ基金のホームページの「ホットニュース」に「10月5日 「粗朶消波施設の設置について」見解を掲載しました。 」との表示がありました。
http://www.kasumigaura.net/asaza/index.html
以下、この10月5日付け記事を「見解」と称します。
「見解」では
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また、それらの粗朶消波施設の設置にあたっては、事前の調査が行われ当時国交省が設置した各分野の専門家が参加した委員会において設置の必要性や効果の予測、環境への影響等の議論を公開で行なっています。設置後もモニタリングが継続されています。詳しくは国土交通省霞ヶ浦事務所WEB内、「霞ヶ浦の湖岸植生帯の保全にかかる検討会」会議資料や「霞ヶ浦湖岸植生帯の緊急保全対策評価検討会;中間評価 http://www.ktr.mlit.go.jp/kasumi/topic/071030/index.html」、 河川環境管理財団のWEB内の資料http://www.kasen.or.jp/work/pdf/res02-04-403.pdf等をご覧ください。
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として、「霞ヶ浦湖岸植生帯の緊急対策工法の検討及びモニタリングとその評価」PDFのリンクをはっています(2010年10月7日10時現在)。
河川環境総合研究所報告のアーカイブ(http://www.kasen.or.jp/kasenlib/kkk_rep1.html)をご覧になると、この報告書は「河川環境総合研究所報告第11号(平成18年1月) 」の論文で、中間報告であることが分かります。
そして「河川環境総合研究所報告第14号(平成20年12月) 」には、「霞ヶ浦湖岸植生保全対策のモニタリング・評価と順応的管理」と題して、最終報告が公開されています。
なぜアサザ基金は中間報告をリンクして、最終報告はリンクしていないのでしょうか。
それは例えば、写真1にあるような指摘が最終報告書で為されているからではないでしょうか(写真左上の記載をお読みください)。
(写真1)
この最終報告書の90ページでも、「生育場に関する評価は粗朶消波工のように課題が残るものが多い結果となった」と明記されています。アサザ基金の下記リンクに掲載されている「植生帯復元後」(写真2)というのは、アサザ基金が批判している、石やコンクリートで造られた消波堤、もしくはこの報告書で解説されている、中に石をいれて補強した消波堤で造られたものではないでしょうか。そうであれば、なぜ批判している施設で造られた植生帯を掲載しているのでしょうか。
http://www.kasumigaura.net/asaza/03activity/01lake/01sizen/index.html
(写真2)
中間報告書をわざわざリンクを作って紹介しているからには、同じ担当者による同じ機関からの最終報告書も信頼できるものであるはずですね。最終報告書では、94ページに「消波が必要とされる場合においては、素材の特性や維持管理面を踏まえ、必要な機能を満たすような構造を検討する。既存の消波工については、現地の波浪状況や植生の保全・再生状況などを総合的に判断して、補修や撤去等の検討を実施し対応する。」とあります。ですので、アサザ基金の見解にある、「現在は、上記一部の人によって行なわれた粗朶消波施設への誤解と混乱を招く批判によって、波浪対策事業では現在すべてが石積みの消波堤になってしまいました。」
という結論は、アサザ基金が信頼してリンクしている機関の報告内容と完全に矛盾しています。
また粗朶消波堤について最終報告書は「漁網に影響を与える」とは書いてありますが、在来の魚類の生息場所として機能するとは書いてありません。ですので、下記の記載も、公開で行われた影響評価の報告と矛盾していることになります。
「アサザ基金では粗朶消波施設を水質改善が進むまで再生の見込めない沈水植物群落の代替機能として位置付けています。調査の結果、粗朶消波施設は沈水植物群落に近い消波効果があり、在来の魚類(ワカサギの稚魚など)の生息場所として機能することも分かって来ました。実際に、粗朶は最近まで湖内の漁業で利用されてきました。同時に、石積み消波堤での調査も行ない、底質のヘドロ化や生息環境の悪化を確認しています。」
読者のみなさまも、アサザ基金が信頼している機関の報告書ですから、是非、上記リンクからダウンロードして、最終報告書と「見解」を読み比べてください。
上記リンクからだと全報告書のダウンロードになって重いので、ご希望の方はこのブログのプロフィールからメルアドを見つけて、私にメールでご連絡ください。霞ヶ浦の部分のみお送りします。
「見解」では他にもいろいろ批判されていますが、この最終報告書を見落とされていたように事実誤認をされているかもしれませんので、内容を再度確認いただきたいと思います。たとえば、
「この石積み消波堤は水域を分断し、水流を妨げ、ヘドロの堆積を促すなどの環境への影響が大きいため、私たちは危機感を強め、それらの設置を中止するように国交省(建設省)に再三申し入れてきました(申し入れ書等で中止を申し入れてきたのは私たちの市民団体だけです)。」
これは本当ですか?このブログの8月12日記事で紹介したように、霞ヶ浦研究会など、消波堤の建設に反対する団体は複数ありました。それらの記録は報告書や本などで残っています。アサザ基金の代表者も参加されたシンポジウムですからご存知ないはずはないのですが、お忘れになったのでしょうか。それとも、「シンポジウムや質問書などでの反対運動以外は反対したとはみなさない」、という前提で上記を書かれたのでしょうか。
上記のような書き方をすると、読者は「反対していたのはアサザ基金だけ」という誤解をしてしまうと思います。誤解を招きかねない表現にも注意していただければと思います。
その上で、アサザ基金全体のホームページの改訂も要するこの点を、明確に示して頂きたいと思います。
「アサザ基金は現時点でもなお、粗朶消波施設を霞ヶ浦に設置する事業を継続したいのですか」
最終報告書にあるように、それはゴミになるだけです。ゴミになる前は消波によって、酸素不足を招いていました。それでも「石でなく粗朶ならよい」として、粗朶消波施設の造成を、アサザ基金の事業として続けるおつもりでしょうか?
10月5日付の「見解」については、この点を明確に問う公開質問をする予定ですが、最終報告書を参照していないなど事実誤認と考えられる部分や、誤解を招きかねない表現が多いので、しばらく待ちたいと思っています。誤解を批判しても無駄だからです。
また、批判している相手が科学的認識に誤解があるとする根拠をお持ちで批判される場合は、出典を書いて頂けるとありがたいなぁと思います。