夜の大橋川

新大橋から、小泉八雲の頃からあった大橋を見ています。その向こうには宍道湖大橋、そして宍道湖が広がります。宍道湖には30年近く通っていますがふだんは調査で忙しくて、夜の繁華街からの風景を初めてしみじみ眺めました。住んでいる方、働いている方にとっては、こういう景色も宍道湖の一部なんだと思いつつ。
県庁から徒歩圏で、これほど広くて漁業が盛んな内水面が広がっているのは、日本では松江(宍道湖)と大津(琵琶湖)くらいだと思います。2つの湖に共通しているのは、どちらも風が吹くと波が強くなること。でも、「波が強いから砂が無くなる」なんて考える人はいないと思います。だって、波があるから細かい泥が洗い流されて砂が残り、そこにシジミが住んでいて、そして小泉八雲が描いたそのままの「シジミかき」の光景が今に残っているのですから。
湖を身近でいつも眺めている方、その変遷を知っている方々の声を聞き取るのは、湖沼環境をどうすればいいのかを考える上でとても大切です。霞ヶ浦ではその過程が少し偏っていたのかな、と思います。

宍道湖を見ていると、同じように浅くて広い霞ヶ浦で某NPO法人が主張している「水生植物が波を弱めるから砂がたまる」なんて考え、どこをどう押せばでてくるのか、そこからして自然環境を本当に観察しているのか???です。そんな効果、あるとしても微々たるものということは、かつての霞ヶ浦を知っている方に聞き取ればわかるはずなのに。
それに現時点でまだ、「本当にこの論文きちんと読んだのかしら?」と思う下記の論文を引用して訂正していません(公開質問で科学的におかしいところを修正してくださいとお願いしたのですが)。もうひとつの論文も、消波堤を作ってアサザを囲い込んだ状態=酸欠をもたらす状態、で動物が増えていると主張している論文ではないのに、平気で引用しているところが不思議です。どうもこのNPO法人の周辺には、自然科学の基本的な知見を有する方がおられないように見えます。自然環境の保全を訴えている団体であるにも関わらず、そうなのだとしたら極めて危険なことだと思います。
Grosse W, Mevi-Shuetz J (1987) A beneficial gas transport system in Nymphoides peltata. American Journal of Botany, 74, 947-952