アカトンボ激減

化学物質問題市民研究会のニュースレター「ピコ通信」最新号(146号)の編集後記に、下記の趣旨の記載がありました。
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10 月10 日のNHKの朝のニュース「おはよう日本」で、石川県立大学環境科
学科の上田哲行教授の研究調査報告が紹介されていた。それによると、アキアカネ(トンボの1種)の数は2009年には1989年の300分の1の生息数に減ってしまった。原因として、他の可能性とともに、ミツバチ大量死の原因と問題視されているネオニコチノイド系農薬が関係しているのではないかと考えられる。
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関連して、編集後記の著者の知人の報告も紹介されていました。
その方は里山や湿地の生物(鳥)観察を行っていて、「春と秋の時期あちこちで湿地等に向かう大群に毎年遭遇していたが、ここ数年見ることができなくなった。数年前から盛んになった田植え時のネオニコチノイド系農薬の使用が原因と、もっぱらのうわさ。でも科学的根拠を提示する人が、どこにもいない現実」

自然環境を一定期間以上きちんと観察している市民の方は、大なり小なり、化学物質が自然環境を破壊しているのではと危惧しているように思います(霞ヶ浦の例を後日アップします)。だから自然再生と言ったときに、目に見える土木工事的な再生だけではなく、私たちの生活が変わる必要があると感じています。でも、環境再生運動で目立っているのはなぜか、局所的な、目に見える改変の指摘が多いように思います。

また、生態学を専門にされている方に、自然再生と化学物質の関係を議論される方が決して多くはないことも、不思議なところです。
たまたま、環境ホルモン学会のニュースレター最新号で、巻き貝のインポセックスを日本でいち早く指摘された堀口先生が編集後記でこう書かれていました。
「実験室のデータと実際の環境中での生き物の変化・状態との関連性を示し、複雑な自然界で想像を超えて起きているかもしれない、その現象に迫ることができるか。研究者の真価が問われている気がします。」

除草剤が1950年代後半から日本の平野部の湖沼で沈水植物を消滅させた可能性が高いこと、それにより生態系が底生系から浮遊系にシフトしたことを指摘した拙著「里湖モク採り物語」は、まさに「複雑な自然界で想像を超えて起きているかもしれない、その現象に迫ること」を目指していました。そして、こういう研究を自然環境学専攻でさらに展開していくために、いろいろ準備をしています。もはや手遅れとならないように願いつつ。。

里湖(さとうみ)モク採り物語―50年前の水面下の世界

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