環境エピゲノム異常

化学物質問題市民研究会のニュースレター「ピコ通信」の149号に、「エピジェネティクス毒性学入門」という記事がありました。化学物質問題を考える上で低容量問題とエピジェネティクスはとても重要な概念だと思っています。そのエピジェネティクスを分かりやすく解説しています。著者は30年に渡って化学物質や医薬品などの遺伝毒性試験・研究に従事された方です。以下、要約です。

エピジェネティクス」とは、遺伝子の構造的な変化 (突然変異) を伴わない発現調節を総称したものです。発現調節はDNAメチル化やヒストンのアセチル化の結果として、クロマチン・染色体の構造的な変化などによって生じます。
近年、多くの外因性物質によって、「エピジェネティクス」が異常となり、遺伝子の最終的な働きである、たんぱく質合成が影響を受けることが知られつつあり、これらの現象を総称して「環境エピゲノム異常:
Environmental Epigentics」と呼びます。そして、発がん過程においても「環境エピゲノム異常」が深く関係していることが明らかとなってきました。
Jones. P.A. and Baylin. S.B.: The epigenomics of cancer. Cell, 128: 683-692.2007
ガンだけでなく毒性学全般においても、化学物質によるさまざまな毒性現象を、変異原性とエピ変異原性とを基盤として解析してゆくことがこれからは重要となってきます。

(追伸)今回はこの記事のカラーの解説図がとても分かりやすいので、大学でカラー印刷したものを明日貼っておきます。