湖沼生態系における浮葉植物の役割

ハス群落の魚類利用について研究したY君の修論に関連して、国際誌を再度レビューしてみました。見落としがあるかもしれませんが、フィールドで浮葉植物群落の魚類利用を環境要因と合わせて調べたものは皆無でした。動物プランクトンについては、「沈水植物群落の重要性は様々に研究されているが、富栄養化した湖沼では沈水植物は皆無か、あっても少ない。だから抽水植物や浮葉植物の役割を明らかにすべき」との趣旨で抽水植物と浮葉植物について調べたものを一つだけ見つけました。
しかし、貧酸素化が問題になった北米のヒシ群落でさえ溶存酸素濃度が1mg/lを切ることはなく、手賀沼のハス群落のように40日間で10回以上1mg/lを切るようなシビアな貧酸素化をもたらす浮葉植物群落の影響を報告した文献はありませんでした。
今回見つけた文献は、私が水環境学会に浮葉植物の弊害事例を紹介した論文を出して以降のものです。浮葉植物の生態系での役割については、今後さらに知見が加わるものと思われます。
ハスという植物は、貧酸素化という点では浮葉植物の中でも横綱級という気がします。その弊害の報告が少ないのは、ヒシと違って海外に移植されていないからだろうと思っていたら、イタリアの池に移入したハスが10年以内に在来種を駆逐したという1990年代の文献がありました。やっぱり、花が綺麗だから植えてしまうんですね。第2のヒシにならないように、Y君やHさんの論文がなるべく早く国際誌に掲載されないと、と思いました。