水道水の放射性物質

原発事故の収束に「年というオーダー」という発言が当事者から飛び出すなど、事態が長期化する懸念が強くなっています。野菜や水道水からの放射能検出も長期化するでしょう。私たちはどうすればよいのでしょうか。
先日の降雨後は水道水から乳児の摂取基準値を超える放射性ヨウ素が検出され、3月26日の産経新聞には関連記事が多くでていました。そのうちのひとつに「水をためておけばどうだろうか」との質問に「ヨウ素半減期は8日なので原理上は、放射性物質の量が減る。しかし同時に水道水に入っている消毒用塩素も分解されてしまい、ほかの病気をもたらす原因になりかねない。衛生上の観点からは推奨できる手法ではない。」との専門家(放射性防護学)の回答がありました。
信州大学の中本先生によると、水道水に残留塩素が残るように義務づけられたのは敗戦後に日本を支配した進駐軍の指導によるもので、野戦で即席に病原菌の無い水を造るには最適でした。しかし病原菌を殺す塩素は、大型の生物にも影響が無いわけではありません。実際、水道水に金魚をいれると死んでしまいます。「塩素があることそのものが安全」なのではなく、「塩素が残っている=病原菌が増えられる環境にないという点において安全」ということなのです。ですから、場所によると思いますが、たとえばヨーロッパの国の中には、全国一律に残留塩素が残るような塩素添加を義務づけていない所もあります。私自身は自己責任で、残留塩素がない水しか、家族で使う飲用には用いません。
しかし乳児は病原菌に対する抵抗力が小さいのは確かです。だからほ乳瓶は煮沸消毒するよう指導されています。ということは、放射性ヨウ素が気になる方は自己責任において、汲み置いた水道水を8日(放射性ヨウ素の濃度は半分に減少)もしくは16日(放射性ヨウ素の濃度は4分の1に減少)後に、一度沸騰させてから使えばよいということになるかと思います。
リスクはゼロではありませんし、万人に等しくもありません。例えば化学物質過敏症は、同じ濃度の被爆で発症する方としない方がいます。今、求められているのは、事実としての現状データの全面公開です。そして同じくらい大切なのが、私たち一人一人が、科学的知見からどうすればよいのか、高校の参考書レベルの基本的なところからみずから考え、自己責任で行動することだと思います(影響が顕著のところではなく、基準の見直しなどでグレーゾーンになりつつある部分についてです。念のため)。
理系離れが指摘されて久しいですが、人間の都合で自然は動くものではありません。今回の震災だけでなく、それぞれが直面するリスクに合理的に対処するために、自然科学の基本的な知見は全国民が習得すべきだと、大学入学時には文科III類だった私は強く思っています。

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