東京都/清掃工場から高濃度水銀排出

化学物質問題市民研究会発行のピコ通信151号に、「東京都/清掃工場から高濃度水銀排出 なぜ起きたのか」との記事がありました。概要をお伝えします。「水銀の廃棄については法律で取り締まっているのだから、焼却ゴミに入るはずはない」という前提で何ら対策をとっていないという現実を著者は「根拠無き楽観論」と断じています。原発だけでは無さそうです。

                                                                    • -

日本では焼却場を始め、排ガス中の水銀濃度を規制する法的基準がない。その理由として、
(1)水銀を使った製品やその廃棄物は法律(廃棄物処理法)で特別管理廃棄物に指定されているので、焼却炉に入る筈がない
(2)水銀入りの体温計や乾電池は製造中止になっており、水銀を使った薬品類も使用禁止か製造中止になっている、
(3)仮にそれらが入ったとしても、焼却炉の排ガス処理設備(バグフィルター、洗煙装置、触媒反応塔など)で排ガスを浄化して煙突から大気へ放出する、
ので排ガスから水銀がでることはあり得ないからなのだそうです。これに対し、EU(欧州連合)では90年代から厳しい規制措置がとられています。水銀およびその化合物については排ガス1立方メートルあたり0.05 ミリグラム以下にすることになっています。
こうした現状に対し、大都市自治体では「自主規制値」を設けて監視体制をとっています。その数値はおおむね1立方メートルあたり0.05 ミリグラムで、EU規制値と同じです。
東京二十三区清掃一部事務組合(一組)では、21 ヶ所の清掃工場全部に煙道排ガス水銀濃度分析装置をとりつけています。測定レンジの上限は1立方メートルあたり1 ミリグラムで、自主規制値の20 倍です。濃度がそこまで到達するとはメーカーも想定していません。しかし、その「あり得ない出来ごと」が東京23区で起きました。昨年(2010 年)6 月11 日午後3時30分、東京23区東北部にある足立清掃工場のモニター画面で2号炉の測定数値が急上昇。場所はろ過式集塵機(バグフィルター)の出口でした。数値はすでに水銀計の測定レンジをはるかに突破し、3.5 ミリグラムで目盛が振り切れました。正確には、レンジオーバーしたあと、故障という形で目盛がゼロになったのです。
午後4時12分、工場側は2号炉の操業を止めました。
当日、2号炉の排ガス処理設備を点検したところ、バグフィルターと後段の触媒反応塔に金属水銀がベットリ付着し、水噴霧程度では除去できないことが分かりました。結局、バグフィルターの濾布と最終段階の触媒をすべて交換する羽目となり、締めて2 億8,000 万円の被害(最近の情報では3 億円以上)になったのです。