REACH の経緯と現状

化学物質問題市民研究会発行のピコ通信151号に、「おさらい:REACH の経緯と現状」との分かりやすい解説がありました。抜粋してご紹介します。
REACH とはRegistration, Evaluation, and Authorization of Chemicals(化学物質の登録、評価、認可)であり、欧州連合EU)の新しい化学物質規則のことです。
REACH の根底には多くの重要な理念が込められていますが、その中で特に重要な理念として、次の7 つを挙げることができます。
▼ノーデータ・ノーマーケット
被害が出るまでその物質は安全であるとみなすのではなく、安全が確認されていない化学物質は市場に出さない。
▼立証責任の転換
化学物質の有害性を被害者が立証するのではなく、化学物質が安全であることを化学物質の製造者が立証する。
予防原則
有害性が科学的に完全には立証されていなくても、合理的な懸念があれば、事前に予防措置をとる。
▼代替原則
より安全な代替物質又は代替方法を探し、採用する。
▼市民参加
政策決定プロセスに市民を参加させる。
▼情報公開
決定のプロセスや安全に関わる全ての化学物質情報を市民に分かりやすい形にして、公開する。
▼一世代目標
有害化学物質から一世代以内に脱却する。(次世代に残さない)。

2011 年2 月17 日、EU 加盟国の委員会は投票により、6 種類の高懸念物質(SVHCs)を、初めてREACH化学物質規制の認可リストに加えることを決定しました。これにより、これらの物質について、所定の期日までに特例申請をしないと、所定の期日(以降はこれらの物質を市場に出すことができなくなります。

追伸
高懸念物質の中には、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジブチルが含まれていました。
フタル酸については10年以上前から関心があったので(例えば下記の仕事)、ようやくここまできたかと感慨深く読みました。

山室真澄・田中 至・山本正伸・有信哲哉:潜水鴨類キンクロハジロによるフタル酸ジ−2−エチルヘキシル及びフタル酸ジ−n−ブチルの生物濃縮.水環境学会誌, 2000年3月,23(3),168-172