水資源環境セミナー「液状化と水」

昨年度から開いている「水資源環境セミナー」。昨日4月27日は「液状化と水」と題して自然環境学専攻の木村先生にご講演いただき、環境システム学専攻の徳永先生から地盤の見地から、社会文化環境学専攻の佐藤先生から下水道の観点からコメントをいただきました。この話題への関心の高さを反映して、30名近くの方が集まりました。
木村先生のお住まいは浦安のマンションの5階。今回の液状化で困った順にあげると、
下水>インターネット>ガス>上水
だそうです。上水は給水車が来るのでOK。でも下水は。。。
今回の液状化で下水管は地上に乗り上げ、接続部が至るところで外れました。上水は圧力をかけて流していますが、下水は傾斜だけで流しているので、こうなると全く機能しなくなりますし、修復に時間がかかります。下水で一番困るのがトイレ。仮設トイレができたものの、すぐに汚れる、夜は真っ暗ということで、奥様や娘さんは自宅トイレに吸水シートを敷いて使われていたそうです。家族4人分の排泄物を抱えてゴミ出しするのは木村先生の日課となりました。浦安市では幸い、震災直後からいつものように週2回ゴミを回収してくれたので助かったそうです。ディズニーランドがある浦安市は大量にゴミがでるので、分別せずに巨大な焼却場で焼いているそうです。今回の液状化で、一番海側にあるディズニーランドとこの焼却場は被害がなかったのが幸いしたそうです(なぜ海側が被害なく、一定時期に埋め立てたところに被害が集中したのかは今後の検証が要りそうです)。
佐藤先生からは、下水処理場は基本的に最下流にあるので、今回の津波で多くの下水処理場が機能不全に陥っているとのご指摘がありました。復旧には2年くらいかかりそうということでした。
聴講者の方から「ご自身の大変な状況を、ユーモラスに且つ、分かり易く説明解説してくださった木村先生に頭がさがります。」とのメールもいただきました。
次回以降も、水の視点から様々な問題を取り上げていきたいと思います。

水資源環境セミナーの趣旨
湖沼や河川などの淡水域は、自然環境であるとともに資源です。このため世界の水環境関係の研究所では、科学的な研究と技術開発、両方を実践しています。また学問分野でいうと生態学・生物地球化学・水産・遺伝・公衆衛生など幅広い分野を有して総合的な取り組みを展開しています。これに対し日本では、資源としての水を対象に技術開発も合わせて総合的に教育研究を行う機関は、今のところ存在しません。
そこで、現象やメカニズム解明を主とする理学系と問題解決を主とする工学系との協調体制に加え、国際政治学など人文系の学問分野も内包して研究・教育を展開するなど、本学の研究科の中でも、既に学融合の実績を有する新領域創成科学研究科に「水資源環境技術総合研究所を造る」という目標のもと、資源としての水に関わる現状の紹介と問題点をご講演いただくセミナーを開催することにしました。