環境と文明の世界史 ー人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ

1997年に交通事故で脳にトラブルが生じてから、読書がほとんどできなくなりました。それでも読みたい本は買っておいて、ざっと200冊くらい積ん読状態になっている中から、ようやく読み終えた1冊。10年前の本ですが、例えば3.11やTPP問題を「人類の持続性」を踏まえてどう考えるかの参考になります。
環境問題に関心がある方なら、一度は名前を聞いたことがあるであろう石弘之氏・安田喜憲氏・湯浅赳男氏の鼎談です。この3人が現代型新人の誕生から「欲望全開の世紀」と括った現代までの環境史を議論するのですから、面白くないはずはない。ただし、どんな本を読むときでもそうですが、すべてを鵜呑みにするのではなく「考えるヒント」と捉えましょう。
安田喜憲氏は私と同様、地理学出身です。その安田氏が「影響を受けた」と紹介している東大地理の鈴木秀夫先生は、私が学生の頃まだ現役でした。先生の気候学の講義は、環境が人間にどれだけ影響を及ぼしてきたかが論じられていました。安田氏の語りの随所に、そんな地理ならではの考え方がみられて、地理学という学問の現在的意義を再確認しました。
たとえば私の講義を聴いている学生諸君なら、下記の安田氏の言葉にピンと来るものがあるはずです。講義ではこのブログで「史上最大の集中」として紹介した図を見せて、「水資源の観点から君たちの50年後を考えなさい」と伝えました。
「川の流域単位で、地下水ではなく表流水で灌漑農業を行い、コメと魚の生活文化圏を確立していく。人類が生き延びる一つの方法かもしれませんね。」(231頁)

環境と文明の世界史―人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ (新書y)

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