多摩川のカワラノギクの保全現場を見てきました。
日本の川中流部は本来、洪水を起こして、その度に植生が一掃され、礫だけになります。カワラノギクはそういった攪乱が起こる河川に適応して生きてきた植物です。なので洪水が起こらなくなった河川では、進入してくる他の植物に負けてしまいます。
そんなカワラノギク(日本で分布しているのは関東地方だけとのことです)をどう保全していくのか。
ここでは市民団体(カワラノギクの保全・復元をめざす多摩川市民の会)が行政(福生市、国土交通省)、研究者(明治大学など)と協働して、活動を展開しています。どのような草を刈り取ればよいのか、どういう方向で保全していくかなどは、科学的な知見のもとに検討が重ねられます。毎年洪水を起こすわけにはもちろんいきませんし、本当に難しい事業だと思いますが、協働の力を信じたいと思います。
かつて公共事業による環境破壊が問題になったとき、市民団体は「アワスメントではなく科学的な根拠を!」と要請していました。同じ事が、市民団体が関わる事業でも求められます。また、河川・湖沼は環境保全だけではなく、治水・利水の対象でもあるのですから、管理者である行政との協働なくして持続できません。治水・利水・環境の折り合いをどうつけるかの基礎となるのも、科学技術の裏付けに立った検討です。水環境は目に見えない部分が多いので、特に科学技術の知見が不可欠になってきます。
水環境関連で市民協働に関心のある学生さんは、参加を検討している市民団体が科学技術の専門家と協働しているか、行政に対して対立姿勢かどうかを、当該団体のホームページだけではなく、現場情報で確認する必要があると思います。