訃報:原田正純先生

水俣病問題に生涯取り組まれた原田正純先生が逝去されました。

原田先生との接点は大学1年からです。岩波新書水俣病」をはじめ多くの関連書籍を読んだ上、大胆にも「胎児性水俣病は毒物が胎盤を通ってしまうという、深刻な問題だと思う。現状を教えていただけませんか。」とお手紙を出しました。先生はすぐに専門誌の論文を数編と、胎児性水俣病の意義を解説した手紙も添えて下さいました。

2007年、熊本での地理学会で原田先生が講演され、初めて直接お会いすることができました。30年前のお礼を言い、キャンパスをお散歩しながらゆっくりお話をうかがえました(2007年10月7日付記事)。
水俣病は社会問題であるゆえに、原田先生は様々な苦労をされました。病気と分かれば差別されると、患者からさえ非難される状況もあったのです。それでも事実を解明し、誤りは誤りであると社会に伝えなければ、悲劇は断たれません。

水環境問題も社会と密接に関わっています。自然再生法によって再生事業に住民参加が求められるようになって以来、本当に住んでいる住民団体の意見を踏みにじり、非科学的な自然破壊活動を「自然再生・保全」と称して展開するNPO(主宰者はその水域の住民ではない)を目の当たりにして、科学者としてこのような芽は摘み、制度が正しく運用されるようにしなければならないと思いました。この問題は科学の問題ではなく社会問題ですから、私の主張が科学的に正しくても、科学が理解できない集団がマスコミ操作によってメジャーになれば、批判が噴出する危険もあります。

それでも原田先生のように頑張り続けようと思っています。