台所からの化学で水環境を考える

今年度の自然環境学実習IIでは、身近な水使用から環境を考えてもらいました。

まず水道水、逆浸透水、魚を飼っている水槽の水でCOD、リン酸、硝酸、アンモニア、遊離残留塩素を予測してもらった上で、パックテスト測ってもらいました。魚を飼っている水槽はアンモニアがあるのでは、と予測した班もあったのですが、エアレーションをしているので、硝酸になっていました。

見事に予測が外れたのが、水道水には硝酸が含まれていること。精度はともかく、水槽の水と同程度でした。また残留塩素は水道水だけで検出され、しかも0.4mg/lありました。CODも4mg/lあったことから、浄水場から水道管に流れている間にトリハロメタンなどが発生している可能性があることを説明し、Richardson et al.(2007)の総説にあるように、気相曝露による健康被害の可能性について注意する必要があるかもしれないと解説しました。

日本ではリンが富栄養化をもたらしているとして洗剤の無リン化が進みました。今回は口腔洗浄剤(口に含んでうがいしたら、そのまま排出する)を測ってもらいました。また料理に含まれる砂糖がどれくらいのCODになるかも実感してもらうべく測ってもらいました。合わせて、清涼飲料水に含まれるリン酸も測りました。

口腔洗浄剤と清涼飲料水は、小さじ1杯(2.5ml)を500ml(ペットボトル1本)に希釈して測りました。砂糖はスティックシュガー1本(3g)を同様に500mlに希釈しました。これらの操作は紙コップ、小さじ、ペットボトルと、台所にあるものだけを使いました。紙コップは形が変形するので、希釈作業にはとても使いやすい道具なのです。

学生さんは口腔洗浄剤や清涼飲料水のラベルから、ある程度のリン酸はあるだろうと予測していました。しかしパックテストの環境水を測るレンジだとスケールオーバーしてしまったのには驚いていました。結果は予測を遙かに上回る、3mg/lでした。また砂糖水のCODは6mg/lでした(たまたま、口腔洗浄剤や清涼飲料水も同様でした)。これらの結果から、例えば鯖の煮付けの煮汁100mlを手賀沼の目標値まで薄めるにはCODがゼロの水でどれくらい希釈しなければならないかを、クックパッドからもって来たレシピを見せて計算してみました。また口腔飲料水はそのまま下水に流れることから、直接リン負荷になること、清涼飲用水は飲みのこさなければ環境には直接の影響はないものの、自身がそれだけのリン酸を摂っていることを示しました。

これらの結果を参考に、人口集中地区における生活排水が環境に与える影響を、量としてイメージできるようになってもらいたいと思います。

Richardson Susan D.; Plewa Michael J.; Wagner Elizabeth D.; et al.(2007)Occurrence, genotoxicity, and carcinogenicity of regulated and emerging disinfection by-products in drinking water: A review and roadmap for research. Mutation Research 636, 178-242