宍道湖のなにが変わったのか

ここ5年間、宍道湖ではシジミが激減して漁獲量日本一の座から転落するとか、沈水植物が繁茂して同時にアオコも発生するとか、過去50年間に経験していない状態になっています。
沈水植物がなぜ繁茂するようになったかは私にとっては答えは明らかで、必要なデータさえあれば論文が書ける問題でした。昨日、共著者から筋はOKとの了解を得たので、あとはポリッシュアップして投稿するだけです。水界生態系に関わるこんなに簡単な問題にさえ、生態学者からは「植物プランクトンの優占する『濁った系』から水草の優占する『澄んだ系』へのレジームシフトの可能性が高い」など、アオコの存在を全く無視した現場の現状に基づかない指摘しか出ていないところに、日本の生態学の偏りが現れているように思います。
一方、シジミ激減については一筋縄で答えが出ません。かつて1万トン以上取れていたときは赤潮が発生したり珪藻が優占していたので、塩分が低すぎることは間違いありません。しかし長期観測データからはさほど塩分が低下しているように見えないと言います。また今年は表層塩分が昨年より高かったのに、稚貝の発生は昨年より少ないそうです。
塩分との関係がクリアでない原因のひとつは、長期観測は宍道湖の最も深いところでとっているので、シジミが住むような水深2,3mの湖底部の塩分ではないことだと思います。また過去30年間、データはあるものの測定点や測り方が違っているので、それらを統一しないと本当は傾向が分からないということもあります。
いろいろ難しい点はありますが、宍道湖には地元で長らく現場を見てきた県職員の方や大学の先生方、自らデータを蓄積している漁業者の方などがおられますので、みなさまのお力をお借りしつつ解決を目指しているところです。
まずは来年の早い内に、誰もが納得する減少原因を提示すること、そしてその原因であれば何をどうすればよいか関係者が合意できるプランを考えることが、当面の研究目標です。