このところ、江戸時代から現在に至る宍道湖生態系の記載をしています。植物プランクトン・水草から魚・鳥、そして70年前と現在との窒素循環の比較が査読論文の引用で記載できる水域は、世界中でも珍しいと思います。
ヨーロッパのラグーン(潟)学会で招待講演されたときは戦後の除草剤使用による生態系激変話しかしなかったのですが、それでも聴衆からは目から鱗と絶賛され、その内容は私が国際誌で初めて出したレビュー論文になりました。
今年もまたヨーロッパのラグーン学会から招待講演の依頼があったので、江戸時代の話から一部を紹介する予定です。
表題は、宍道湖が淡水化されようとしていた1980年代に、私が言っていた言葉です。宍道湖を世界で最も有名な湖にしよう。そうしたら外圧に弱い日本だから、非科学的なアセスメントを楯に淡水化することはできないだろう。そして当時、Natureの日本支局に就職したS氏に紹介記事を書いてもらいました。
あれから30年が経ち、宍道湖については主なところは大体理解したと自負しています。残るはシジミ浮遊幼生の発生・定着機構の解明、植物プランクトンと成長率の関係、塩分上昇時の成層状況のシミュレーション、酸化還元電位をモニタリングしながら曝気するシステムの開発と、塩分操作に対する合意形成だと思っています。これに成功して、塩分操作によって宍道湖のシジミ漁獲量が1万トン台に回復したら、宍道湖は少なくとも「世界で最も有名なラグーン」になることでしょう。