ハス群落は魚の生息には不適

沈水植物群落は小型魚類にとって捕食者からの避難場所であるとともに採餌場所としても機能していますが、富栄養化湖沼では欠落していることが多いです。陸水研のY君は手賀沼をフィールドに、抽水植物マコモ群落と浮葉植物のハス群落のどちらが小型魚類にとって捕食者からの避難場所・採餌場として適しているか調べました。
小型魚類の種類数は大型肉食魚がいるマコモ群落の方が、肉食魚がいないハス群落より多く見つかりました。ハス群落では、貧酸素化した区画で採取された水生昆虫の炭素安定同位体比が、そうでない区画よりも著しく軽い-30‰未満という値を示しました。マコモ群落内では、このような炭素安定同位体比の違いが認められませんでした。昆虫類は幼虫時にメタン酸化細菌起源の有機物を取り込んでいると考えられ、ハス群落に多く住むことができたモツゴは、これらの昆虫が羽化後に死んで落ちてきた物を食べていました。
以上から浮葉植物群落、特にハス群落は、貧酸素化と魚類相の単純化を誘発する可能性があることから、沈水植物群落同様の機能は果たせないと結論されました。
本研究はLimnologyに掲載されました。

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陸水研では卒論と全く違うテーマを一から始めて、たった2年で国際誌掲載に値する成果をあげています。理想を言えば投稿も済ませてから卒業してもらいたいのですが、個々の学生さんがイチから始めているので投稿指導してくれる先輩もおらず、現実には厳しいです。それでも今年度卒業生は、6月頃までは就職しても投稿に向けて頑張るとのことでした。それまでは、まだ投稿に至っていない修論の投稿(あと4本!)にいそしむ予定です。