「持続的窒素循環に向けた統合的研究推進」に関する若干の懸念

科学技術振興機構研究開発戦略センターから報告書「持続的窒素循環に向けた統合的研究推進」が出されました。
http://crds.jst.go.jp/type/proposals/201303060001
とりまとめの中心的役割を果たされたと思われるM様は特に窒素が専門だったわけではなく、わずかの期間でここまでまとめられた能力とご努力には脱帽です。
若干懸念されるのは、例えば14頁の「なぜ窒素循環か」でリンを窒素と同じ重みで取り上げない理由を記すなど、生元素循環分野から遠い方がこの報告書を読むと、全くリンを測らない研究を展開してしまいそうなことです。
私がLOICZのSSCをしていた頃、窒素循環が重要だと科学者サイドから提案しようと、欧米の研究者が中心になって当時の知見をまとめた報告書を作成していました。その時に「なぜ窒素か」の理由のひとつとして、生元素循環は炭素だけで回っているのではなく、炭素が攪乱されているのと同様に窒素もリンも攪乱されている、を挙げていました。であれば、窒素だけ調べるのも炭素だけ調べるのと同様に、片手落ちでしょう。
例えば閉鎖性湖沼に与える影響も、同じ量で窒素が増加していても、窒素だけ増加しているのか、窒素と同時にリンも増加しているかで、植物プランクトン相に与える影響が異なってくることが予想されます。窒素研究を進めるにしても、常にN:Pは意識すべきだと思います。