湖の自然再生事業における順応的管理

琵琶湖、霞ヶ浦宍道湖など、大きな湖沼では波が高いので、小さな湖沼のように水際にヨシなどの抽水植物アサザなどの浮葉植物が繁茂することなく、海のような砂浜が広がります。水面下にも続く砂浜には、シジミやイシガイなどの二枚貝が生息し、水質浄化(植物プランクトンを減らすという意味で)に貢献します。
そんな宍道湖にヨシ原を「再生」するという科学的に間違った事業が義務教育を巻き込んで展開してしまった為、これはアサザ植栽同様に看過できないと考え、いろいろ発言してきました。
私の発言がどれほど貢献したかは不明ですが、島根県ではヨシ原植栽は自然再生とは言えないかもしれない、との方向になっているようです。
島根県が昭和10 年代後半〜30年代前半の宍道湖の湖岸状況について聞き取り調査を行った結果が公開されています。「湖岸は砂浜だった。ヨシなどの抽水植物流入河川および湖岸では限られた場所に生育していた。」と明記されています。
http://www.pref.shimane.lg.jp/shinjiko_nakaumi/mekanizumu-WG/mekanizumu_wg.data/wg2-sankou-shiryo1-1.pdf
また昨年の県議会では議員さんの質問に対して、当初宣伝された効果が本当にあるのか、事業を行っている国や県の関連機関が再度検討すると回答していました。
http://www.pref.shimane.lg.jp/gikai/ugoki/kaigiroku/H2406/fukuda_giin.html
事業を進めていくうちに当初の仮説や期待している効果と異なることがでてきたら、科学的に検討して、より望ましい方向に変更するのが順応的管理だと思います。湖岸における自然再生を目的とした事業の順応的管理として、宍道湖のヨシ植栽事業は霞ヶ浦アサザ植栽事業に先駆けて、事実と科学的知見に基づいた方向転換に向かうことを期待しています。