ビタミン剤は死亡率を上げる

日経サイエンス2013年6月号の記事「覆る活性酸素悪玉説」中に、表題の囲み記事がありました(63頁)。
「疫学研究の結果から、ビタミンなどの抗酸化物質が豊富に含まれる果物や野菜をたくさん食べる人はそうでない人よりも長生きする傾向があり、がんになりにくいことが示されている。だから当然、抗酸化物質を補充すれば、健康増進につながると思われた。しかし、最も厳密に計画された研究の結果は、その仮説を支持していない。」として、二つの研究成果が紹介されていました
ひとつは、ヘビースモーカーとアスベストに曝露されたことがある喫煙者にベータカロチンとレチノール(ビタミンAの1種)を投与した実験。投与を受けたグループは受けなかったグループに比べて肺ガンの罹患率は28%、死亡率は17%高いとありました。
もうひとつはメタ解析で、ビタミン摂取に関する科学論文47編のデータをまとめると、早期死亡のリスクはベータカロテン、ビタミンA、ビタミンEと相関したとありました。
いずれも危険率が示されていないとか(字数制限から?)、抗酸化物質の代表格であるビタミンCを対象としていないのはなぜ?とか、批判的に論文を読む癖がついている私には、この囲み記事にあるグラフだけでは主張に賛同できませんでした。危険が指摘されているのが脂溶性のビタミン類というのも、気になります。
サプリメント摂取が日常化しているアメリカの現状に対して、食事の重要性を強調するためにこういった主張がでてきているのかもしれないと思いました。