宍道湖の湖岸

宍道湖湖岸調査に来ています。
このところ宍道湖の水位は高めで、かつ波も高めです。
下の写真は北岸の秋鹿(あいか)地区の自然湖岸です。波が届かないところ、通常の水際より一段高いところにヨシが生えていること、故にこの波でも全く影響がないことが分かります。

同じ秋鹿地区の2002年に、子供達にヨシ植栽をさせた場所です。沖合に見える消波堤は、中に詰めていた粗朶が無くなって消波効果がほとんど無くなり、植えたヨシに波が当たっています。

自然湖岸のヨシと違い、人工的な操作をしたところに植えられたヨシは、消波堤が機能しなくなると、このように根元からえぐられていきます。こういう光景を見ると、霞ヶ浦湖岸に生えているヨシが同じようになっているのも、何らかの人為的操作によって生えてきたヨシが、本来の波によって元に戻る途中のように思われます。

下の写真は、昨年、やはり小学生に「自然を再生する」と植えさせた秋鹿地区の湖岸です。竹を積み重ねて波を抑え、本来は緩傾斜の砂浜が続いていたはずの場所は淀んだ湿地になっています。これが宍道湖の自然なのでしょうか?

日本生態学会が「自然再生ハンドブック」で推奨したのが、このヨシ植栽なのです。この事業は今年度で中断することになりましたが、日本生態学会からはついに、この事業に対する懸念は表明されませんでした。湖沼に関する日本生態学会員のレベル、もしくは関心の程度は、その程度ということなのでしょう。
湖沼の自然環境を守るには、生態学の専門家と名乗る方々の意見などに従う必要はさらさらなく、地元の現場を見る方々(常に水系を見守っている、河川事務所の方々も含め)が自信を持って進めていくべきであることを、霞ヶ浦宍道湖で起こったことは示していると思います。
国土交通省の河川事務所の方々からは、「生態学が分からないくせに」と生態学関係者から言われるとよく聞きます。私から言わせると、生態系が分かっていないのはそういった生態学者の方で、ご自身が思っている生態系とは、ご自身が得意とする生物群だけなのです。河川事務所の方々の方がよほど、「生態系」を現場で見ておられると思います。